エイリア4


なんと豪炎寺はチーム脱退命令をだされ奈良で去ったという。
おい、中学生を郊外で一人にするな。

必殺技なんてものが存在する世界ですし、宇宙人だって現れる世界ですし、豪炎寺はどこかで元気にしてるんだろうとは思うけれども心配だ。
私だったらやっていける気がしない。お金もないし。体も子供だし。前世で高校三年生まで過ごして今も中学二年生で実質三十二歳だけど、社会人として過ごしたことはないから大人の常識とか考え方とか知らないし。

円堂が話を切り替えようと「新しい仲間が増えたから、紹介するぜ!」と意気揚々と見慣れない二人を前に出したとこで、先程の漫遊寺中の監督?とメンバーが此方へ来たのだった。
試合を思い出したのか、今やっていたことも忘れ相手選手たちと仲睦まじく話し始めた。
まったく忙しいやつ。

マネージャー達と顔を見合わせ苦笑いし、ボーッと目の前の光景を眺める

向こうの監督とか、キャプテンとか凄くいいこといっている。流石お寺っぽい学校にいるだけあるな。いや、関係ないか。
確かに円堂ってゴールキーパーの割にめちゃくちゃ動くから他のポジションでやってみるのもありだよな。

てゆうかサッカーにリベロなんてあるんだ…。バレーボールとかはなんとなくあるって知ってたけど。バレーボールは、なんだっけ、守備だけみたいな。たしか背の低い人とかが配置されやすかったりするんだっけ?
じゃあサッカーにおけるリベロって何するんだ?この疑問を早々に解決したくて、誰かこっそり教えてくれないかな〜と目線だけチラチラ動かしていると、先程の新メンバーだという一人と目があった。さっきフォワードをしていた子だな。

向こうはこちらに気づき、にこりと笑う。まて、この子、さっきの試合となんか違わないか?なんというか、凄く、穏やか…?

まぁまぁ、それはおいといて、リベロだよ。鬼道あたりなら凄い詳しく解説してくれそうだが、やつは最前線。つまり円堂の横で一緒に話を聞いている。
ここにきてお喋りな土門もその近くにいるし。いや、知ってるなら誰でもいいか。詳しく知りたかったら後で他の人にも確認すればいいし。
隣の音無ちゃんに肘でつつき、此方に気づいたところでリベロとは何か聞いた。すると彼女は私が思っている以上に詳しく教えてくれた。
ポジション的にはディフェンダーの位置だが、攻守ともに自由に動ける選手で、状況にもよるが司令塔もしたり何でも屋みたいなものらしい。

「ありがとう」とこそっと言ったところで、向こうも話が終わったようだ。
練習しても学校をみて回っても自由に過ごしてくれと、向こうの監督は随分と寛大なようだ。とりあえず、瞳子監督の指示次第だなとあたりを見回したところで「うわあああ!」という数人の声がする。

なんだ?と私含め他の人も音の出所を探すと、グラウンドの外、外周と言えばいいだろうか。そこに穴が空いてて、漫遊寺中の生徒の何人かがはまっていた。なんだこれ?
と思っていたら、誰かが「木暮!!」と怒る声がする。
こんな厳格な学校だけど、なんだかめんどくさいことが起こっているようだった。


…………

木暮という生徒がこういう悪戯を頻繁にしているようだが、何故か音無さんが庇い、更に彼を試合にだしてあげて欲しいと抗議していた。
多分私がこっちに合流する前に何かがあってこういうことになっているんだろう。

そして、試合に出す条件として、本来漫遊寺中の者達がやるはずだった町の警備というか、怪しい人探しをしてくれとのことだった。先程の穴にはまった生徒達の代わりということだろう。色々突っ込みたいがそれはおいといて、ここでまた問題が一つ。

「そんなことしてる暇あるか?!そんなことよりも練習の方が大事だと俺は思う」

なんとこの台詞、風丸がいったのだ
それによって円堂と風丸が衝突を始めた。
私は今回からチームに参加した人間。旅に出てからこれまでのことをずっと見ていたわけではないけど、チームに亀裂が入ってるんじゃないかと感じる。
勿論雷門メンバーに短気な人間は思い付く限り染岡くらいしか(多分)いない。そもそもが穏やかというか、優しい人間が多いからまだ誰も爆発したり暴れたりとかそういうことはないんだろう。
けど…。

ここで更に溝が深まるのは不味いと思って割って入ることにした。

「じゃあ風丸は練習したら?というか、練習したい人は練習すればいいじゃん、なにも全部を全部団体行動しなきゃいけない訳じゃないんだからさ


皆ポカンとして私をみていた。が、お構い無く続ける。

「私練習付き合うよ。移動ばっかで疲れたからあんまりウロウロもしたくないし」

どう?と念を押して周りを見渡すと第一声は風丸。

「苗字、頼む」

そういって円堂から逃げるようにグラウンドへ先に向かってしまった。
ありゃ重症だ。風丸に続き栗松くんも「お、オイラも!」と続いていってしまった。

円堂は何ともいえない顔で、去っていった二人の背をみた後、両手で頬を叩いてから「苗字そっちはよろしくな」といつも通り笑って、残りの皆と町へと向かっていった。
流石の円堂でも思うところがあるよね。

皆の背中が見えなくなったあと、グラウンドへ向かいながら考えた。
練習がしたいと焦ってる二人。特に風丸は新参者の私がみても大分焦ってるように見えた。漫遊寺中との試合では前より格段に動きが良くなってると思ってたんだが、これだけ焦っているということは本来の目的のエイリア学園との試合で何かがあったってことなんだろう。
というか、ニュースでみてたからエイリア学園に負けて焦ってる。日本の存続を背負ってるってのもあると思うし、まだ目にしてないけど、それほど強かったってことなのかな。
世宇子の時も大分実力差があって、それでもあんなに食いついて頑張ってたのに何で今はあんな状態なんだろうか。
練習に付き合ってその状態を少しでも知れたらいいんだけど。


…………


「う〜〜ん」

二人の練習に付き合うために、まずは見学させて貰ってるんだけど。
見てるだけでこっちも焦ってくる。そもそも練習に集中できてない。
私ってただの野球好きな中学生だけど、二人とも(何度もいうけど特に風丸)絶対一回スポーツカウンセラーみたいな人としっかり話をした方がいいと感じる。

風丸も栗松くんも、世宇子のあんな試合でずっと負けないで戦かってきた人だが、多少なりともストレスはあっただろう。それが地続きでエイリアがきて、町も学校も破壊され、ボロクソ負けて、ある意味これが普通の人間の状態ではあるよね。

これだと他の雷門メンバーのメンタルも気になってくる。そう思うと円堂なんて空元気で頑張っているようにしか見えなくなってくるな。
あと、あの新しいフォワードの子も、うまくいえないけど…。いや、気のせいかもしれない。そもそも新メンバーに関しては名前すらまだ知らないわけだし。

この二人は要注意だな。
今の練習が終わって、完全に自由になる時間。例えば夜とか。面と向かって話した方がいいかもしれない。
あー、一応瞳子監督にもそういう行動をしていいかどうか確認しておこう。

「風丸も栗松くんも、肩に力入りすぎ。二人ともさっきの試合より動きがぎこちなく見えるから、一回深呼吸とかしてみて、もっかい1on1やって。攻守逆でね。あと私瞳子監督に確認したいことあるからちょっとはずすね」
「は、はいでヤンス!」
「…ああ」


…………

瞳子監督がそもそもどこにいるのか分からなくて、とりあえずキャラバンの方へ向かってみた。
すると案外あっさり見つかった。
キャラバンは駐車場に止めてあるのだが、駐車場を外と隔てる柵がある。その一番奥まったところで誰かと電話をしていた。
あー、邪魔しちゃ悪いなと電話が終わるのをまってから確認をした。
が、なんと私の提案はモノの見事に却下された。「余計なことはしないでください」と。
これは流石の私もカチンときますよ。監督がどうにかするってことなのかどうなのかは知らないけど、言い方。

わかりましたといって、その場は去ったが、生憎私はそこまでいい子ではないし、さっきの対応に腹がったので無視してお話を決行することにします。

再びグラウンドに戻り、二人の練習にたまに茶々をいれながら何をどう話していこうか考えていれば、町へ向かった円堂達が無事に帰ってきた。


練習を撤収し、監督達とも合流して事の顛末を聞く。
まず結果として、怪しい人というのは突き止めたので木暮くんはサッカーの試合に出して貰えるとの事だった。

そしてその怪しい人というのが、今まで戦ってきたエイリア学園の一人、レーゼという者だったらしい。音無さんが写真を撮っていたので見せてもらったが、あのテレビでもみたことある抹茶ソフトみたいな頭のやつだとすぐに分かった。
奴は記憶を奪われ、エイリア学園から追放もされこのあたりをあてもなくさまよっていたらしい。
なんか…うーん。
写真とその話と聞いたとき、言葉にするのが難しいモヤモヤが胸に残る。

だが、そんなモヤモヤを解決する時間などなかった。

ドオオオオンッ!!という轟音と少しの揺れ。

「まさか!」
誰の声かはわからないが、皆でグラウンドの方へ走ると、噂のエイリア学園がいたのだった。



20240115


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