15 A

※刀剣男士たちのお互いの呼び方捏造してます
※一人称、審神者呼びなども多目に見てください



あの後青年に軽々と持ち上げられ、ご丁寧に目隠しをされて何処かへ拉致られた。
プルプル小鹿のように震えていた私だが、連れてこられたのは大正モダンな何処かの家。

何処?なんて頭に?を浮かべてたら青年は心が読めるのか色々説明してくれる。
ここは彼がある仕事をするための拠点らしい。その仕事は勿論教えてくれるはずはないんだが。
そして、この青年の他にも同じ仕事でここへ帰ってくる仲間があと三人くらいいるらしい。(もう少ししたら二人帰ってくるっていってた。残りの一人は今は遠方にいてすぐにはこれないとかなんとか)
とりあえず今やっている仕事は予定ではあと二日後に終わるらしく、それが終われば皆で一緒に日本に帰ろうかと、勝手に予定を決められた。

まって、まじで私の楽しい楽しいイタリア旅行何処いっちゃったの。
なんでこんなとこで全然知らない青年に軟禁される羽目になってんの。これ、私観光できていてとかちゃんと発言しなきゃダメなんじゃない?
だって、これで一番迷惑かけてるのディーノさん達だよ。明日も迎えに来るって爽やか笑顔でいってたのに。それにソニアさんが本当にどうなったのか心配で心配で。あんなに優しくしてくれたのに。

さっきまで溢れずにいた涙がここにきて決壊した。

「うっ、うう、そにあ゛さんっ〜」
「主さん!どうしたの?!」
「ううう、私、ただイタリアがんこうぎただけなのに、そにあさんん〜!!」
「え、えと、もしかしてさっきのキャバッローネの人のことかな。それに観光?イタリアに?主さんそこまでお金もってるって情報なかったんだけど」
「うちは一般的な家庭だっ」
「う〜ん。どうしよう」

ボロボロ泣く私に、多少なりとも困っているようだった。この調子でもとの場所に戻してくれるなんてことはないだろうか。ないな。まじでどうすりゃいいねん。

「ぬしさま〜!」
「ん?こいつが?」
「あ、小狐丸さん、日本号さんお疲れ様です」

ドタドタと大男二人が部屋に入ってきた。白髪で長髪の男と、髪を雑にまとめてるおじさんだ。
これがさっきいってた一緒に仕事をしている二人とやらだろう。
白髪の男はこちらの確認を一ミリもすることなく突撃してきた。

「ぬしさま?!なぜ泣いているのです。まさか、堀川国広に何かされたのですか?」
「それが、観光でこっちにきていて、キャバッローネに捕まってたんだよね。ここに来る前もホテルで涙目になってたし」
「ちが!」
「ああ、おいたわしや…私が慰めて差し上げます」
「あの!」
「ですね。はー、昔から巻き込まれ体質なのはよく知ってるけど、ボンゴレ関係というかボンゴレに狙われちゃうなんて。主さんらしいっちゃらしいけど」
「そんなぬしさまを私はお慕いしてますよ」
「なぁ、こいつ本当に…」
そういっておじさんに頭を鷲掴みされ、ぐわんぐわんと揺らされる。それに白髪の男は怒っているようだが、おじさんは悪びれもせず。
「ああ、勘違いだったな。どうも腑抜けた顔してるんで本当にお前さんかどうか疑っちまった」
「何をいっているのです、目が腐りましたか?」
「あの!!!話を聞いてくださいっ!!」
「「「ん?」」」

まじでこいつら全然話聞かねぇな!
勇気を振り絞ってでかい声を出してみれば三人とも黙って私の方を注視する。


「あ、え、私、本当に観光にきただけで!ソニアさんは私に不自由ないように付き添ってくれてただけで、別に、狙われてるとかそんなんじゃ、なんならあんた、いや、あ、あなた様がたに拉致されたんだけど!!本当だったらあと三泊四日楽しくイタリア回って家に帰る予定だったの!!!」

先程の楽しそうな三人の表情は何処へやら。真顔でこっちを見つめてくる。怖い。けど、ちゃんといわないと、殺されそうな感じはとりあえずしないし(勘だけど)

「とにかく、さっきのホテルに帰して!楽しくイタリア旅行させてください!!」

あっ、最後の言葉はいらなかったかもしれない。うっかり。
さてさて、三人顔を見合わせごにょごにょ話し合っているけど、どうなる?どうなっちゃう?

「あのね主さん。僕の勘違いだったとしても、僕たちからしたら他の奴らと関わってしまうことが既に嫌というか、だめというか。勿論僕たちの個人的な意思でもあるんだけど、それは主さん自身を守ることでもあるんだよ?」
「は?」
「そうだな。あんたはまだ記憶がちゃんとしてないから自分のこともちゃんと理解できてねぇ。そんな状態でボンゴレ、はたまたもっとヤベー奴らに狙われ出したらもっと危ねぇんだぞ?」
「え?」
「ですから、今のうちから私達と一緒に、以前のように過ごした方が貴方のためでもあるんです」
「はい?」

先程から私は椅子に緩くくくりつけられている状態なのだが、奴らに四方を囲まれこんなサイコパスなことをいわれている。怖い。死の恐怖とかじゃなくて、頭おかしい奴らに囲まれているこの状態が怖い。
涙も止まったばっかなのに、また出てきそうだ。

うう、誰でも良いから助けてくれ。ディーノさんは連絡とれないし、この際お兄さん召喚しちゃう?いやでもお兄さん一人呼んだとこでここには三人もいるわけだし、数の暴力ってやつだよ。ソニアさんみたいにお兄さんもあんな感じで倒れちゃったら本当に無理。

どうすりゃいんだよ…。

「うう、誰でも良いから助けて」
「はやくぬしさまの記憶が戻ればよいのですが…」
「まぁ、記憶なんてものをどうこうできるほどの力、今はねぇからなぁ」
「とりあえず隊長待ちだね」

が、直ぐ様三人の様子が一変する。
皆辺りを気にしはじめる。何処から取り出したのか彼らは刀とか槍とか持って私を背に囲む。
なに?!この感じだと敵が攻めてきました!って感じだけど、でも、え、敵?彼らの敵って…まさかディーノさん達が助けにきてくれたとか?

一瞬の静寂が包む中、次に起きたのは部屋の壁が爆発音のような音と一緒に吹っ飛んだのと、膝丸くん以上の「う゛お゛おおおい!!」というクソでか大声が響いた。
私の相変わらずの反射神経では一つ一つを認識できてないのだが、いつの間にか白髪の男と、これまた白髪の男が刀をぶつけ合っていた。

「テメェらやってくれたじゃねぇかぁ!」
「おやまぁ、これは隊長がやらかしたんでしょうか」
「あちゃー、やっぱり隊長には主さんのこと教えない方がよかったかなぁ」
「テメェらの隊長の失態じゃねぇ、テメェら全員最初からネズミの匂いがしてたぜ!」

まじで相手の方、顔が怖くて声がクソでかいとても怖い。本当に耳が死にそう。
三人とも周りにいる黒ずくめの人達をばっさばっさ凪払っている。というか、血がビュンビュン飛んでるんですけど。
あ、無理です。
ここで私の意識は飛んでしまった。致し方ない、こんなR18G映画みたいな光景、耐性なんかあるわけないじゃないか。


…………



「っと、おいおい、どうするよ!この部屋にずっといるわけにも行かねぇぞ」
「そう!ですよね!隊長には後で状況を伝えて、この場は主さん優先で行きましょうか」
「です、ね!ここは私めにお任せください。日本号と堀川国広はぬしさまを」
「了解!」「はいよ!」
「逃がさねぇぞ!!」

声のデカい白髪ことスクアーロは後ろに一歩とんだのち、名前もろとも三人を葬るため、広範囲に剣を振りかぶり、加えて仕込み火薬も大量に飛ばす。
しかし、堀川たちの判断もそれに負けないはやさではあったため、名前を抱えた堀川、殿の日本号は飛んできた瓦礫の擦り傷くらいですんだ。

渦中の小狐丸はそれなりに傷をおったものの表情は楽しそうだった。

「ふふ、ぬしさまは無事に行ったようですね」
「っち、おい、お前らはあっちを追え」

残っている部下たちに指示を出し、その場にはスクアーロと小狐丸が対峙することになる。

「これでやっと本気を出せそうです」
「っは、減らず口を。さっさと息の根とめて、あいつらもまとめて殺してやる」



…………



ところかわって堀川、日本号は夜のナポリの街をかけていた。
その走りは刀剣男士時代のものとかわらぬ速さで、追っ手が到底追い付けるものではなかった。

二人は目で合図をして、既にcloseしている適当な店に身を潜めた。彼らの前で鍵なんてものは意味がない。次の日の朝、店主が店にやってきたら、すっぱり切られたドアノブに目をしばたかせることだろう。

「はー、酒が飲みてぇ」
「もう少し我慢してくださいね。それより、んー、困りましたねぇ。向こうも暗殺部隊なだけあって、最初から目はつけていたんですね」
「まぁ、オレでも怪しいと思うわな。一気に刀類を扱う手練れが四人も入隊だもんな」
「記憶は前ほどいじれないですけど、曇らせるくらいならできるんですけどねぇ。あ、マーモンですかね。たしか優秀な幻術士ですから、その曇りも全部取っ払われちゃったかな」
「かもな」

一息おいて日本号が「で?隊長様は?」と目を瞑ったまま堀川に問う。

「連絡用の携帯にはなんにも。でも、主さんの話をしたら遠方といえどこっちに向かってるでしょうね」
「今はどの辺かねぇ…。なぁ、さっきのこいつの話しだと、ただ遊びにここにきてたみたいだが、本当にこのまま朧へ連れていくのか?」

つむっていた目をゆっくり開き、一つ一つの言葉を確認するように言葉を吐き出す。
その言葉に堀川も苦笑いをこぼす。

「んー、組織的にはそうしますよね。まぁ、そもそもそういう気持ちでホテルから連れてきたんですけど。でも、さっきの主さんの反応を見ちゃうと、やっぱりちょっと可哀想な気もしますよね。純粋にイタリア楽しみたかったんだなぁって」
「お前にだからまだいえるけど、オレは別にそこまで必死こいて、今すぐこいつを連れていかなくてもいいとは思ってんだよなぁ」
「今すぐ、ってことはいずれはってことでしょ?」
「そりゃあな。オレだってこいつのことは気にいってんだ。どっかのタイミングでまたオレたちと一緒にいてほしいさ。今すぐって訳じゃないだけで」
「僕は、早ければ早いほど嬉しいですけど、そうですね…そこまで切羽詰まってはいません」

そういったところでお互いにはは、と乾いた笑いが漏れる。

「…決断すんなら、小狐丸と隊長様が戻ってくるまでだな」
「ですね」

お互い思うところはある。今目をつむっている彼女は、自分達がいなくともそれなりに楽しくやっているようだった。同じ学校に通っている鯰尾と骨喰から報告を受けては安心するのと同時に羨ましいという気持ちも勿論あった。
それでもこの二人に関しては羨むという気持ちより、主が幸せで嬉しいという気持ちの方が強かった。
だからこそ、ここで本当に連れ去ってしまって良いのか揺らいでいた。

朧は名前の元刀剣男士達で構成された組織だ。勿論主をもとめて発足されたものだ。
堀川や日本号のような者たちもいれば、全然興味ないたちも、反対に必要以上に主を求めてやまない者たちも。
そんな者もいるからこそ、今をそれなりに楽しんでいる主を連れていくことは、主にとって良いことなのか。それが正しいことなのか。分からないのだった。

「んぅ」
「お、意識戻ったか?」

声を小さく漏らした彼女に二人は近づき様子を確認する。

「…んむ、あいしゅ…たべゅ」
「…ふふ」
「は、気絶してたのに夢見てんのか、はは、やっぱりうちの大将さんは肝がすわってんな」

二人はひとしきり笑ったあと、目を合わせうなずきあった。



…………


集合場所として提示された場所に小狐丸はついた。
何処かの倉庫で、何やら血の匂いがすることに気づいた。
まさか堀川や日本号が追っ手に追撃された?それではぬしさまは?!駆け足で目的の部屋へ向かうと、血濡れで肩で息をしている堀川と日本号がいた。
だが、肝心のぬしさまの姿はなく、その代わりでもないが二人の前に仁王立ちしていたのは此度の自分達の隊長である、厚藤四郎だった。
厚の短刀は血で濡れており、それは堀川と日本号を攻撃したものだった。

「いったい」
「小狐丸、大将は?」
「いえ、二人に任せて私はスクアーロの相手をしておりました」
「っち」
「ぬしさまは!?」
「この二人が逃がした」
「…は?」
「逃がしたなんて言い方はやめてほしいな」
「は、普通にキャバッローネに不意打ちくらってやらかしただけだ」

肩で息をしながら強がっているが、あきらかにその傷は厚がやったものだ。いってることと、やっていることがずれている。

「大将、なんでオレに一番に助けを求めないんだよ」

そしたらオレの全てをかけてあんたを守るのに。


20240109

描写はしてないんですけど、四人ともそれぞれヴァリアーの隊服アレンジとか、黒スーツとかその辺り着用しています


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