石切丸と蜻蛉切と餅いり肉団子

我が本丸も無事に年を越し、緩やかな年末年始を過ごした。
三が日を過ぎてからはいつも通り仕事をし始め、その中で今剣と、鶴丸国永が仲間として増えた。

平和が続いているは続いているのだが、個人的な悩みが一つ。


正月と言えばお餅。
私個人も、家の刀剣男士達もお餅が大好きなのだが、調子にのって作りすぎてしまった。
言うまでもないが余ってしまっていて、どう食べ尽くしてしまおうかと日々頭を悩ませていた。

昨今色々な料理のレシピが開発されているため、それを有効活用していこうと、料理好きな面子と会議をし決定した。

そして今日がその一日目。

「今日は冷えますし、お鍋にしましょう」
「…鍋はいいけど」
「それは雑煮になってしまいませんか?」

今日の調理お手伝いは余り厨に入らない面子。
上から私、石切丸、蜻蛉切だ。
体格が大きくてなかなか繊細な作業が苦手な二人は手伝ってはくれるが厨に入っての作業は出来ないため、今回なぜ自分達が声をかけられたのかが不思議なようだ。それにとても不安そう。

「雑煮にはしませんが、お鍋に入れる肉団子にお餅を入れようと考えていまして。それで、お餅をきるのは大変な力仕事なので二人に手伝ってもらいたくて」

力仕事と聞いて安心したみたいで先程よりは表情が明るくなる。

そう、今回は肉団子の中に小さいお餅を入れようと思うのだが、その餅を細かく切る作業は名実共に大変なわけで。
それに二人が料理がよほど嫌いとかではなければ私が一緒に作業をしたかったからというのも理由だ。これに関しては恥ずかしいので内緒だが。

「それにお鍋は基本的に切って煮るだけなので、慣れないこともあると思いますけど、よろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ不束者ですがよろしくお願い致します」
「料理は本業ではないのだけれど、私なりに頑張ってみよう」

いえいえとんでもない、こちらこそ。こちらこそ。なんて何度かお互いペコペコしたあと作業が始まった。

最初に目的の餅を二人に切ってもらい私はその横で大量のお肉をフードプロセッサーちゃんでこねこね。因みに鶏ベースと豚ベース二種類作っちゃう。
餅は中に勿論入れるが、大葉とか生姜とか薬味類をそれぞれいれて何個でも食べられるようにしてしまおう。
完全に私の好みだけれど最近はすりおろした柚子の皮を使うのにはまっているので、片方にはそちらも。
ふふ、文明の利器最高。

体力を消費することなく肉だねが出来ていくが、それよりも早いペースでお餅の方は切り終わるようだった。

「さすが、早いですね!私の今作っている肉だねにこれをいれて丸めていくのですが、もうすぐこれも終わりますんで一緒にやりましょうか」

しかしまた不安な表情になる二人。

「その、自分達の手ではあまりに巨大な肉団子になる気がするのですが」
「心配無用です。これを使います!」
「えっとこれは、すぷーん…とやらでは」

取り出したのは計量スプーン。

「確かに計量スプーンもお二人に比べれば小さくて扱いにくいとは思うんですけど、素手でやるよりは作りやすいかなと。
まずですね、ここにお肉を詰めて、なんならもうこれでお肉を掬って軽く指で押しつめるとかでも大丈夫です!そこに切ってもらったお餅を詰めて、上にお肉をちょっともって形を整えれば…こんな感じで出来るというわけです」
「「おお」」
「あとはこれです、これは…ふふ、最終兵器と言っても過言ではありません」

二人の期待に満ちた目線が後ろに隠し持った道具に集中する。
これに関しては以前ネットでやり方を発見して、いつかやってみたいなーと思っていたものだ。

「じゃん!卵の入っていたパックです!」

先程の計量スプーンの時以上に困惑している二人。この表情の切り替わりが見ていてとても楽しいのは口には出さないけれど、表情にはでてしまっているかもしれない。

「これはすごいですよ、私もやるのは今回がはじめてなんですけど。この卵の入っていた窪みにお肉を詰めていって、で、またお餅をいれる、でお肉を少し被せて、そして、ここで上の蓋を空の状態で戻して振ります!」
「振るのかい!?」
「ええ、振ります!」

数秒振ったのち上蓋をひらくと、そこには形が均一な肉団子が十個もあるではないか。
さながらテレビショッピングでもやっているような気持ちだ。目の前の二人は魔法の方な光景におー。と感嘆の声がもれている。
ネットからの拾い物なのに私も自分自身が発見者ですと言わんばかりに嬉しくなってしまう。

「これなら自分達でも出来そうです」
「卵のパックは一つしか確保できなかったので一人しか使えないんですが、計量スプーンは何本かありますから、一緒に頑張りましょう」


そんなこんなで餅入り肉団子を大量生産していくのだが、最初はやはり慣れないこともあってかぎこちない部分もあったのだが、お互いに笑いあいながら楽しく料理が出来たのでそんな事は気にすることでもなかった。

他のお留守番組が厨に合流する頃には、既に団子作りは終わり、鍋の具を投入している最中だった。
綺麗な肉団子達を褒められてる石切丸と蜻蛉切は満更でもなくてすごく嬉しそうで、私もつられて笑顔になるのだった。



…………


「「「いただきまーす」」」

鍋の回りにはお握りや、お付けもの、副菜類など。各々好きなものをつまみながら鍋にてを伸ばす。

「わー、この肉団子餅がはいってる!」
「おいし〜」

さりげなく石切丸や蜻蛉切となりに移動し「美味しいですか?」と声をかけてきたのだが、二人とも言うことは同じで「自分が作った分、より美味しくかんじるし、料理をして、それを皆に美味しく食べてもらえるのも嬉しい」といっていた。

嬉しい気持ちは連鎖するなんて、どこかで聞いたことがあるのだが、それは勿論私にも連鎖するわけで…。

「お?主〜!珍しくお酒のんでるじゃん!アタシがついであげるよ〜!」
「わっ、そ、そんなにはいいです!」

嬉しくて少しお酒を飲み始めたら次郎太刀に見つかってしまい、その後付き合わされてしまった。

20240107

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