番外2、月9小学生薬研

※時系列謎


放課後いつメン三人でゲームセンターに来ていた。
が、どういうわけか今は一人でUFOキャッチャーをしている。

いつもあれだけベタベタベタベタと引っ付いてきて鬱陶しいのに、皆で楽しく遊んでいても足手まといとなれば無情に切り離す。とんでもない奴らだ。
そもそもなにをしていたかというと、あの太鼓をリズムに合わせて叩くゲームで遊んでいた。
何となく察して貰えると思うが、あの二人反射神経、運動神経超高校級なため、二人で遊ぶモードで戦力外通告を出されたということなのだ。

気持ちはわかる。それでもそんなにすっぱりクビにされるのもなんか癪にさわるというかモヤモヤするというか。



それにしても

「くそ〜〜〜〜、絶妙なアームがばで全然落ちない!!」

もう何円この台に吸い込まれたことか。アームガバはゲーセンスタッフの悪行でもあるし、この台のやる気のなさでもある、許さない。でもそんな明らかにダメだとわかっているところへ課金してしまう私も悪い。
例えていうと、DV彼氏だとわかっているのにも関わらず貢ぎ、世話してしまう彼女である。
自分自身の将来が今とてつもなく不安になった。

くそーと思いながらまたコインを台へ吸い込ませ目的の人形を睨み付けていると隣からいきなり声がした。
「ふふ、大将、そんな怖い顔してたら眉間に皺がついちまうぜ」
「んぅぇ!?やげんく、あっ!!だあ〜!もうちょっとだったのに!」
ニコニコと隣で笑っている藤四郎一家の一人薬研くん。“なんでここにいるんだ”“何をしに来た”“不用意に月九するなよ”等々、色んな想いをこめてじとりと彼の顔を見つめるも華麗にスルー。

「そんなにこれがほしいのか?」

と、ケースの中にある手のひらサイズのぬいぐるみに視線を向ける。

「いや、そうでもないけど…。でもここまできたら落としたいし」
UFOキャッチャーってそんなもんじゃない?

「ふーん、そうか。んじゃ、俺も手伝うよ」
「うん?」
「そら、スタートだ!」
「え、ちょ」

手伝うというわりには、ちゃっかり私の財布からお金をとりだし台にさっと差し込みやがる。
そして私の手をいつの間にかボタンの上へと置いていた。手さばきが完全に泥棒のそれなんだよ。

「ほら、ボタンおして、そう、そこで止まってくれ。んで奥だな。そこだ!」
「あ?え、え、え?!」
いわれるがままボタンを押してしまえばアームはそのまま下に降下してしまう。
「あっ、え、これとれるの!?え、私の200円っ!!」
「はっはっはっ!大丈夫だって、ほら、ちゃーんと捕まった」
「ふっ、甘いね薬研くん。つかんでからがこのアームのガバ真価発揮なん\テーレッレッレレレッテーテー!/
なん、だと…」
「な?いっただろ?」

呆気にとられている私に代わり、ぬいぐるみをとってくれたのは薬研くん。
小学生の癖に膝に手を付きどっこいせなんていいながら腰を屈めてとっていた。そしてそれを私の手のひらの上へ。

「…ありがとう」
「どういたしまして」

じっとその人形を見つめる。ふふ、ぶさかわいい。最近人気がでてきているふくよかで、かわいいとはいいがたいその見た目に、こわばった顔も思わず崩れてしまう。

「…なぁ、大将」
「ん?」

呼ばれたので何の気なしに顔をあげるといつになく真剣な顔をしていた。
な、なんだいきなり!とおもって一歩後ろに足を引くと同時に彼の手は私の腕を捕らえた。小学生の癖に存外力が強い。それに謎の威圧感というか迫力というか、さっきまでの楽しそうな雰囲気この数秒でどこ置いてきた?!と焦っているも、彼の言葉が続いた。

「このまま一緒にきてくれねぇか?」
「えっ」

何事?!どこへ?!
真剣な顔ではあるんだけど、でもどことなく切ない感じで、すがられているようで。
あまりの真剣さに私もいつものように適当にあしらうことができなかった。
いつもハプニングばかりの毎日だけど、こういうシリアスなハプニングは苦手だ。普通のバカみたいなハプニングも苦手だけどさ!!!!

「なぁんてな」
「!?」
「ほんと可愛いな、大将は」

くつくつ笑いながら手をはなした薬研くん。

さらっと可愛いなんて言うし、さっきの真剣な表情と真逆の無邪気に笑うそのギャップ。
小学生だとしても手を出そうとする女性は絶対数多いるぞ。(私は違うけどね!!!)

何も出来ぬままカオナシと化していたらぬいぐるみを持っている手をすくわれ、ちゅっ、とそのぬいぐるみにキス。


こ、この月九男はよおおおおおお〜〜〜〜!!!!!
小坊のクセによおおおおおお〜〜〜〜!!!!!
そのまま上目使いで爽やかに笑うなあああ!!!!!

「この人形を見るたび、俺のこと考えてくれるよな?」

それ以上月九すな!

「じゃあ、またな」
「あば、ばばば、ばぶ」

誰か助けて、私は月九のヒロインにはなれないんだよ。この甘ったるくて逆にグロテスクな空気を誰か一新してください。

そんな時、神は私を見捨てなかった。

辺りを見渡した瞬間目に入ったのは見慣れた銀髪と煙草の煙。

「ご、」

そう、その人物めがけ一心不乱に走った。ゲームセンターという通路が狭くて歩くのすら困難な場所をそれはもう華麗に走った。

そして向こうも私の存在に気づいた。
ゲッていう顔をして、懐から爆発物を出そうとしているけど、そんなの構わない。

「獄寺さん、お願いします!!罵倒してください!!!」
「ば!?気持ちわりぃ!こっちくんじゃねえ!!!」

今日ほど獄寺さんに感謝した日はない。
容赦ない悪口まじでありがとうございます。



20230825
薬研メインの話なのに罵倒要因獄寺出してすいません許してください



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