12 夏休み:白ウニ

これから話すことは全て事実なんだ。
いや、嘘乙wwwと言わずに最後まで聞いてほしい。

昨日疲れていたのか、こがさんとスイカを食べていたのに途中で寝落ちしてしまったらしい。
寝ている間、内容は覚えてないけど凄く良い夢を見て、幸せだな〜と思いながら目を覚ました。

ぐっすり寝たせいか少々体が重怠くて、ぼーっとしながら茶の間へ向かった。
おはよー。と声をかけようとするよりも先に、お母さんの「あんたいつまで寝てるの!!!?起こしにいってもピクリともしないし、本当に信じられない!」という怒号が飛んでくる。
お婆ちゃんとこがさんがまぁまぁなんて嗜めているものの、お父さんもあまりよくない表情をしてる。
え?そんなに寝てたとまだ少しかすむ目を擦りながら時計を確認すると昼の一時だった。ありゃー、確かに寝すぎたなと思ったけど、普段の休みの日だってこんな時間に起きることは珍しくもないのになんでそんな怒ってんだと考えていた。
しかしその疑問もお母さんの次の一言によって解決する。

「丸一日も寝て、更にお昼まで起きてこないなんてどれだけぐうたらする気なのよ!!時と場所を考えなさい!
母さんもこがさんも甘やかしすぎよ!!!」
「は?」
「は?じゃない!」
「すみません!」

反射的に頭を下げてしまったが、私自身全然状況が飲み込めない。
丸一日ねてた?更に昼までねてた?つまり???
急いでテレビに目を写す。いつもお昼にやっているバラエティ番組。しかし右上を見ても時間しか表示されていない。今何日?頭が全然働かず、自分のスマホどこだったっけとその場でワタワタしていると、今時珍しい日めくりカレンダーに目が行く。

二十三日

「え」

冷静に考えてみよう。お婆ちゃんちに来たのが、夏休み初日の七月二十一日。
勿論その日の夜にスイカを食べて寝落ち。
そして今起きてきた。壁のカレンダーは二十三日…。

私の嘘でしょ?!?という叫び声は近所のおじさんにまで聞こえていたそうだ。


…………


寝るの大好きだとしても、こんな素敵な土地で素敵な人たちが存分に甘やかしてくれる素敵時間を、寝て一日無駄にしてしまうなんて一生の不覚。

父母、親族の家に泊まりに来たというのにそんなことお構い無く激おこ。私は「夜の焼き肉で使う飲み物買ってこい!!そして夕方まで外で遊んで来なさい!!」という無茶振りをされ外に放り出されてしまった。

普段から出不精で、休日なんて外へでない。なんなら部屋からもでない私ですが、最近は問題児達によって馬鹿みたいに外で遊ばされてたのは二人とも知ってるはずなんですけど???最近だって勉強会しようぜとコンビニからの拉致何回あったと思う???

それなのになんでここに来てこんなに怒るのか今一理解できない。いや、まてよ…。最近某ドラマで見た、小さいイライラが積もり積もって爆発したなんてやつかもしれない。
そうだとしてもどういうタイミングで爆発してるんだよッ!


父母がすごい怒ってると説明はしたが、一連の出来事で一番の負の感情を抱いてるのは勿論私だ。
心と体のケアをこの数日で思う存分しようと意気込んできたのに、寝て一日無駄にするってどういうこと?勿体ないにも程があるし、なんでそんなに寝れるの私!本当に嫌、最悪。

涙目になり、唇を噛み締めながらお婆ちゃん相棒の自転車をこぐ。目的地は中心部のスーパー。

いくら都内より涼しい土地とはいえ、夏は夏。こがさんが麦わら帽子を貸してくれなかったら死んでた。
こんなとこでずっと外にいれるわけないじゃん。お父さんもお母さんも私のこと殺す気かよ。また鼻がつんとした。

スーパーにつく前にこの町唯一のコンビニが目に入った。
情けとしてお握りと昨日の残り物をちょっとだけ食べさせてもらったけど、お腹は全然満たされていない。お使い代は多めにもらっているし、ちょっと何かかったって文句は言われないだろう。というか言わせてなるものか。

自転車をコンビニ横に停め中に入ろうとした時、この田舎の風景に似使わない人が目に入った。なんなら目があった。
全体的に真っ白で、ツンツンしてて、段差座ってアイスを食べていた。
この人もここ以外の土地から来た人なんだろうなぁ。お腹は膨れないけどアイス食べたいなぁ。なんて思いながらコンビニへ入った。


…………


ふふ、買っちゃったよね、チョコ○ナカ○ャンボ
。それと熱中症対策に飲み物もね。
田舎だからか駐車場には車が一台。中で買い物してる親子のだろう。
それ以外に人は見当たらず先程の人と同じように、段差に座り少し溶け始めている黄金のそれにかぶりついた。
このサクサクと中のパリパリとバニラのふわふわ感、天才的だ。

ちょっとだけ元気が戻ってきて、この後の事を考えてみた。
飲み物を買ってしまったら重くて動きにくくなるから、出来ることなら返り際に買って帰るとして、それまでどこにいようか。
スーパーといっても小さいとこだから何時間もうろうろしてたら不審者扱いされるし、だからといってここにそんな詳しいわけでもないから、居座れる場所とか知らないし。あっ、そんなときのスマホじゃん。

いそいそとポケットから少し熱をもったスマホをとりだし画面を見た。黒い画面には勿論自分が写っていたのだが、その後ろにもう一人ニコニコと笑顔で誰か写っていた。
ひっ!!と思わず悲鳴が漏れてしまうのは仕方ないと思う。後ろに先程の白い人がしゃがんで「やぁ!」何て言ってるんだもん。
肝試しはこんな昼間からしてないですし、頼んでもいないです。
危なくスマホを吹っ飛ばしそうになったが、気合いで阻止した。

「ど、ドナタデスカ!!」
「はは、なんで片言?僕は白蘭、ヨロシクね名前チャン♪」
「ひえ」

ニコニコと人の良さそうな顔でしゃべってるけど不審者がすぎる。なんで私の名前知ってるの。それとなんで話しかけてきたの。
明らかにあの問題児達と同じ匂いがする〜〜〜!やだ、こんなとこでまで関わりたくね〜〜〜!

どう対処するか言葉に詰まっていたが、やはり私の勘は正しかったようで「ちょっとだけ僕と遊ぼうよ」と勝手に人を引きずりだした。
「ちょっと待て!!」
「え〜?」
どうにかしなきゃと一生懸命考えるが、出てきた言葉といえば「自転車のって来たからそれも!!」だった。

ふと「貴女はポンコツを通りすぎてただの馬鹿なんですから考えるだけ無駄です」という宗三の声が聞こえた気がした。


…………


白蘭くん?さん?は遊ぼうなんて言ったわりに私に自転車をこがせ、自分はニケツという天性のSっ気を遺憾なく発揮していた。

「暑い、重い、むりしぬ」
「大丈夫大丈夫、ガンバレー」
「くそが」

なんでこんなことになっているんだ。そしてどこへ向かわされてるんだ。
はぁはぁ息切れを起こしてるというのに、この男、容赦なく会話をしようとしてくる。

「なんで名前チャンこんなとこにいるの?それに一人だし。護衛の子達はいないんだね」
「はぁ?!はっ、はっ、なんでって、お婆ちゃっちにっ、はぁ、来てる、だけ」

護衛ってなに?!

「ふーん…」
「てか、今しゃべりかけないでっ、もらえま゛す、かね!!?」
「ふふ、そっか〜♪」

やっぱりこの人突き落として交番駆け込んだ方がいい気がしてきた。


後ろからひたすら話しかけてくる白ウニ(嫌すぎて心の中でそう呼ぶと決めた)を必死に無視して目的地までこいであげた私。汗だくで脇とか背中とか絶対濡れてる。
目的地といわれたどり着いた場所は神社だった。道路沿いにポツンと階段があって、まわりは林で囲まれてる。

「じゃ、わたしは、はぁ、これで」

もはや目的もなにもわからないが、ただただ早く帰りたい私はそのままUターンしようと白ウニに背を向けたのだが、さっと手をとられ、合気道よろしく、いつの間にか私の体は階段を向かいにしていた。

「???」
「レッツゴー♪」

鉛のように重たくなっている足は動くわけなく、それでも白ウニの野郎は私の背中をぐいぐい押し「ゴーゴー」なんて楽しそうにいってやがる。
いつか覚えてろよ。

もはや気合いだけで登りきり、後は引きずられながら賽銭箱の目の前まで連れてこられた。

「…こんな田舎にきてまでお参り?」
「まー、そんなとこカナ?」
「(暇人がよ)」

特にお参りするわけでもなく、お賽銭するわけでもない。ただただ本殿を見つめるだけで、一体何がしたいんだろう。

じーっと見つめているとこちらの視線に気づき、あの“人のいい笑顔”で返される。

「ねぇ、名前チャン」
「な、なに、です」
「名前チャンって、もしかして」「そこで何をしているんです!」

後ろの方から、明らかに怒ってる声が聞こえてきた。
揃ってそちらに首を向けると、神主であろう袴をはいた黒髪ポニーテールの巨人がいた。
大きな歩幅でこちらに近づいてくる。ぎええ、絶対怒られるやつ!!今日こんなんばっかり!!

「あーあ、なぁんだ。ちゃんといるんじゃん」
「え?」
「じゃあ名残惜しいけどこれでバイバイしようかな。あ、そうだまた会いたいから、この帽子次会うときまで僕に貸して♪」
「は?」
「待ちなさいっ」

勝手に色んな事が起きているため、全然整理がつかないが、起きたことを簡潔に説明するとこうだ。

神主くる→白ウニ麦わら帽子強奪→神主巨大な棒を振り回す→白ウニ宙返りからの逃走

わ、訳がわからん。

呆気にとられていると、神主さんに「っ!主?!」とハチャメチャに驚かれた。
色々疲れたので以下簡潔に伝えさせてもらう。


その後神主さんから色々なことを聞かれ、後から来た神主さんの弟さん?(おねぇ?)にも同じことをまた聞かれた。
疲れてもう動けないとぼやくと二人は私を担ぎ上げ、軽トラへ乗せ、ついでに自転車も荷台に乗せ、目的のスーパーで飲み物まで買ってくれ、家まで送ってくれた。

ヘロヘロになりながらお母さんと対面したものの、神主さんが私が不審者に絡まれてたみたいなことを説明してて怒られずにすんだし、なんならちょっと心配された。
晩御飯は手伝い免除をいただき、お礼ということで神主さん達とも外で焼き肉を楽しんだ。
弟さんがお酒をがばがば飲んでどんちゃん騒ぎで
ちょっと楽しかった。
そして私はまた翌日の十一時頃まで寝てて怒られた。


20230901

いつかここ番外として詳しくかきたいです

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