10、夏休み前の閑話休題という名のフラグ

並盛中学校にいつもとかわらず生徒達の賑やかな声が響いている。

テストも残るとこ一つだけ。正直残りの休み時間で復習をするなんて悪あがきをする体力すら残ってない。
考えることといえばテストが終わったあとの事。点数の事は一旦置いとくとして、夏休み突入だぞ?ちょっと我慢していただらだら生活も心置きなく満喫できる(はず)
美味しいもの食べに外にでるのもいい。夏休みは田舎のおばあちゃんちへ行くのが恒例だからそこでの焼肉やスイカなんかも楽しみだ。
お祭りでのチープな焼きそばとかクレープとかも食べたいし射的とかもやりたいなぁ。

でも今一番気になっているのは昨日テレビでやっていたヨーロッパ物産展!!
並盛デパートで来週辺りから始まるらしい。ヨーロッパの美味しいものがテレビででかでかと特集されていて勿論どれも美味しそうだったけど、なかでも群を抜いて心撃ち抜かれたのはイタリアで有名なジェラート店のジェラート。見てるだけでも楽しいのに、味も天下一品。昨今の映えを狙ってかワッフルコーンにもトッピングできるようで、そんなの美味しいに決まってるじゃない!

「はぁ、ジェラート食べたい…」
「その馬鹿みてーな顔を十代目に向けんじゃねぇ、ぶっとばすぞ」

獄寺さんこわ。
たまたま頬杖をついて、たまたま沢田くん方向に顔を向けて、ポツリと漏らした独り言なのにめちゃめちゃ威嚇される。
沢田くんは「なんでそんな急にめちゃめちゃなこというの?!」と綺麗なツッコミをいれ、私にも全然一ミリもそんなこと思ってないから!!あれだよね!今度並盛デパートでやるヨーロッパ物産展のだよね?!とかフォローをいれてくれる。
ありがとうと思うけど、なんでそんなに考えてること分かるのとちょっと怖くなったのは秘密。

「名前はアイスが食べたいの?」
いつの間にか私の前の席になっていた鯰尾くんが聞いてくる。
「本場のジェラートね」
「もー、これ以上ブクブクふとってどうするの?」
「なんで食べたいって願望にそんなに毒づいてくるの?怖い」

「抉りかたが尋常じゃない」と小さな声で漏らす沢田くん。聞こえているんだからね。

「苗字、獄寺ってイタリア出身だぜ?作ってくれるかも知れねーぞ」と相変わらずのくそむちゃぶりを、山本くんが邪の一切ない太陽スマイルを向けてふってくる。私に対しても獄寺さんに対しても余りにも酷すぎる無茶振り。陽キャの王者山本くんじゃなかったら今ごろお亡くなりになっていただろうに。

しかし今まで帰国子女なのは知ってたが、まさかイタリア出身だとは知らなかった

「ちなみにツナんとこの坊主もイタリアからきたんだぜ」

多分あのリボーンくんとかいう子供の事だろう。

「沢田くんイタリアに親戚でもいんの?」
「いやいやいや!そんなわけ!」
「苗字もボンゴレファミリーに入ればいつでもイタリア行き放題、食い放題だぞ」

噂をすれば例のリボーンくん登場。今さら突っ込むけど、不法侵入では?

ぼけーっとしてたのもつかの間、ふと鯰尾くんに視線を向ければ今までに見ない怖い顔でリボーンくんを見ていた。
いつもへらへらして、ふざけたことばっかしてるのに、いきなりこんな態度は逆に私まで怖い。例えるなら温厚な人がいきなりキレたときの心情に近い。

沢田くんも地味に怯えてるし、獄寺くんも何故か爆発物をだして警戒してる。なになに、不法侵入だけでこんなにバチバチに火花散ってるって何事?!大人の不法侵入だったらそりゃあそうなるけど、子供だよ?みんなの警戒心高過ぎない?

なんとか空気を和らげようと「なんか前も聞いたけどなにそのボンゴレファミリーって」と、適当に質問してみた。
返ってきたのは「イタリア最強のマフィアの組織だぞ」という明るいリボーンくんの声と、「って設定のごっこ遊びなんだぜ」という山本くんの底抜けに明るい声。

中三でごっこ遊びて…。流石に気が抜ける。

「あ、うん…そっか、三人とも小さい子と遊ぶの上手なんだね(前もラなんとかくんと遊んでたし)」
「(めちゃめちゃ誤解されてる)そ、そうなんだよねー!こいつ最近マフィアとかそういうのにはまってて!」
「まじなマフィアに決まってんだろ」

と小型のモデルガンを出すリボーンくん。ガチガチに憧れてますやん。ポーズまで決めてるし。沢田くん慌てて銃を見せないようにするも返り討ちにあってるし、先程からキレ散らかしてる獄寺さんは山本さんによってうまく流されている。目の前が完全に動物園で、なんかちょっとこっちの気持ちもさめるというか、ちょっと落ち着きますよね、ええ。

「ふぅ、鯰尾くん、最後のテスト頑張ろうか」
「ん?うん!名前」
「なに」
「アイスはお店のも美味しいけど燭台切さんとか、歌仙さんがつくったのも美味しいんだからね」
「うん?」
「ま、分からないよね。とにかく!ボンゴレなんかよりもっといいとこあるよって話」

こいつと骨喰くんもなにかごっこ遊びしてるってこと…?!


…………


「えー!名前夏休み毎日俺たちと遊べないの?」
「当たり前だ馬鹿」

無事に期末テストも終わった。結果は赤点もなくそこそこの点数でお母さんにも誉められるほどだった。
信濃くんという名のメンヘラが突撃してきたり、宗三に勉強をみてもらうというかしごかれたり、鯰尾くんと骨喰くんが遊びに誘ってきて勉強の妨害をしてくるし、山本くんに引きずられ無理矢理沢田くんちでテスト勉強会させられたり、蜂須賀くんがまた感情ジェットコースターしながら勉強みてくれるし、とにかくこんな濃密な勉強会をしていたにも関わらずここまでの成績を残せた私は最強なのではと錯覚してしまう。

明日からは無事に夏休みで、しかも初日から田舎のお母さんの実家のお墓参りに行くので、こいつらとの初日からハードモードな夏休みは回避成功、最高!
しかもおばあちゃんちには三泊四日する予定だし、奴らにもどれくらい泊まってくるか教えていないため、暫くはのんびりと過ごせることだろう。
ニヤけるのを押さえられないのは仕方ない。
「顔が気持ち悪いことになってるよ?」とか隣でいってくる鯰尾くんなんか屁でもない。
ぶーぶーアホ毛を揺らす彼とは違い、骨喰くんは黙ってこっちを見つめているだけだ。あら珍しい。骨喰くんもこういう時一言だけどもごりごりにえぐってくるのだが、それが発せられる気配がない。
正直私は浮かれていた。赤点回避、夏休み、ハードモード夏休みの回避、全てにおいてうまくいっていたため、調子にのって「寂しいかい?骨喰くん???」なんて美少女並びに小悪魔系女子しか使うことの許されない台詞をこぼした。
そしたらどうだ?

「…ああ、寂しい」

と捨てられた猫のような態度で静かにそう呟くのだ。流石にこれには私もちょっとキュンとしてしまいましたよね、ええ。なんなら私の机の周り一帯がその言葉に衝撃を打たれ、一瞬静寂になるまでした。
顔がいい人間、とても、恐ろしい。
私はそんな周りの空気と、今までの彼らのギャップに耐えきれず「とにかく!夏休み遊びになんか誘わないでよねえええええ!!!!」と、どこぞの負け犬キャラのように叫び逃げるようにうちに帰った。



20230521
短いけど夏休みイベントもりもり



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