エイリア1


その後の報告

雷門と世宇子との試合が終了したあと、それはも大変だった。
雷門優勝で会場が沸き上がる。
そんな中、自分のブレスレットの事をすっかり忘れており、体に電気というより痛みが走りその場にうずくまりうごけなくなった。
今度は奥の通路に繋がる扉が開き、スーツを着た男たちが監視の男を捕縛して私を助けてくれた。うまく働かない頭で考えてみたが警察が一番妥当かなと思った。(警察だったのだが)
更には雷門の皆も此方に押し寄せてきて、一斉になにかしゃべっていたけどよく分からなくて、警察の人達に保護されながら外へ運び出された。

移動中にブレスレットは無理矢理壊され体に痛みが走ることはなかったものの、安心感と疲労感と色んな物がどっと押し寄せてほぼ気絶状態だった。必死に私の名前を呼ぶ声が聞こえていたが多分それは両親だったはず。

次に目が覚めたときにはそこは病院で、お母さんが隣でビックリした顔でこちらを見ていたのが印象的だった。
そのあと直ぐに診察を受けて、警察からも少し事情聴取をされ、両親と少し話した頃には外はもう真っ暗だった。

話を詳しく聞いたら、病院に運び込まれて丸一日寝ていたらしい。
体も軽い栄養失調くらいで他に目立ったとこはなく、頬の腫れも引いていた。サッカー部の何人かが面会に来ていたらしいがまだ私も目を覚ましている状態ではなかったし、警察からも極力身内以外と接触を控えるよういわれていたようで会うことはなかった。

翌日
私のお腹は元気よく鳴り、もりもりとご飯を食べることができるくらいには回復していた。元々体は丈夫な方だったからここまでとは。

朝御飯を食べたあともう一度診察し、今日一日様子を見て明日の朝退院することが決まった。
野球部の皆にもいち早くその事を報告しといた。
大会は順当に勝ち進んでいて五日後には準決勝だ。
大変なハプニングはあったもののなんとか大事な試合はちゃんと自分の目で見ることができそうで一安心。
サッカー部の全国大会優勝もめでたいものだったがやはり自分の入っている部活が勝ち進むことの方が嬉しい。順調に勝てば全国…。
嬉しさを噛み締めながら顔に枕を押し付ける。まだ優勝した訳じゃないけど、平和って素晴らしい。沢山いいたいことはあるけどそれにつきる。

そんなときだった。

ドンッ!!というなにかが窓ガラスに当たる音が聞こえた。予想だにしないことに、体がびくりとはねつかんでいた枕も床に落としてしまった。

頭をよぎるのは影山。まさかそんなことないよね?と思いながらも体は臆することなく動いていた。枕を急いでベッドの上にもどし問題の窓ガラスを覗くと、そこにいたのはサッカーボールを持った少年だった。あ、目があった。

少年は焦った顔をして口をパクパクしている。何かしゃべってるのだろうか?と疑問に思い窓を開けると、いもにも泣き出しそうな顔になり「ご、ごめんなさい!!」と大きな声で謝罪してきた。
「え、うん…」

私も何が起きてるのかよく分かっていないから曖昧な返事しかできなくて、少年も顔色を伺うように頭をそっとあげた。
何が起きてるか分からないとはいったが、想像はつく。彼の手にあるサッカーボールが当たったのだろうが、こんなに怯えられるのは何故なんだろうか。考えたくはないが、私の顔…怖い?

お互いなにもいえず、とりあえず何かリアクションしなきゃと話しかけてみる。

「あ、あのさ」
少年はビクリと肩を弾ませる。
「えーと…私怒ってはいないんだけど、その、そ、そんなに怖がんないで、ほしいなと」
「…ほ、ほんとに怒ってない?」
「うん」

すると少年の表情はさっきとうって変わって穏やかな顔つきになった。
「あの、本当にごめんなさい。サッカーボールで遊んでたら間違って当たっちゃって」
「あー、うん大丈夫。窓も割れてないし、私も別に…ちょっと驚いただけ。次は気を付けてね」
「うん!」
なんとか怖い?イメージは払拭されたようだ。話も一区切りついたしそろそろベッドに戻ろうと窓を閉めようとしたら「あの!」と引き留められる。
「あの、その、ぼ、僕とサッカーしませんか!?」
「え、ええ」
すごいキラキラした目で見つめられる。どうしたもんか、いくら明日退院とはいえ果たして動いていいものかどうか。それにさ、サッカーか…。正直今はサッカーに触れたくないのが本音。
影山のせいでトラウマになりかけてもおかしくなかったレベルだ。
だけど、こんな小さな子の期待に応えないのもなんか意地悪しているみたいで嫌だし、うーん。
「やっぱり、ダメですよね…」
うーん!!!!!


―――

結局そこら辺を歩いていた看護師さんに確認してかるく、短時間だけならということで少年とサッカー(パス程度)をすることになってしまった。
さすがにあんな小さな子の悲しそうな顔を見てしまっては無視するわけにもいかず。それにサッカーといったってこうしてキャッチボールのようにパスを出しあうだけだ。普段体育の授業でやるサッカーよりまし。
それにしてもこの子、こんな小さなうちから入院なんてどんな病気というか、疾患にかかったのだろうか。こうして動けるし、見た目的にも問題なさそうだから外傷で入院というわけではなさそう。
さっき看護婦さんが「ああ、太陽くんね」と名前を把握していたあたり短期間って感じでもなさそう。

「へへ、お姉さんサッカー上手だね!」
「あー、うんありがとう…」

サッカーうまいことを誉められても全然うれしくないし素直に喜べない自分の社交性の低さが憎い。さっきみたくまた不安な顔させてしまうことだけは避けたい。
誰だって腰あたりしかない小さな子を、自分のせいで悲しい顔にさせてしまうなんて嫌でしょ?!

「僕太陽っていうの、雨宮太陽!お姉さんは?」
「苗字名前だよ。太陽くんはいつもここでサッカーしてたの?」
「ううん。この前まではあっちの方でしてたんだけど、さっきみたく窓に当たっちゃってすごく怒られちゃってそれでこっちの方でサッカーしてた」
優しくない人の近くの病室の横でやってたんだね、かわいそうに。
「でもこっちでサッカーしてよかった!」
「なんで?」
「だって、名前お姉さん優しいし、サッカー一緒にしてくれるし」

その満面の笑みに“ごめん、私明日退院なんだ”と野暮なことをいえるほど私は馬鹿じゃない。

「ねぇ、また明日もサッカーできる?」
なんて考えてるうちにきてしまったよ、明日のお誘い。絶対来ると思った。
本当のことを言っても嘘を言っても絶対悲しませてしまう。でも、嘘をつくより本当のことを言った方が遥かにいいことではあるよね?

「あの、ね、明日は私退院するから、その遊べなくて」
「え」

パスは私の方にはこず、それと同時に彼の表情もさっきとはうってかわってしぼんでいく。
分かってたけど!分かってたけど!ごめんと心のなかで激しく謝りながら彼のもとへと近づいた。

「その、私ちょっと前に倒れちゃって疲れとかで。もう元気だからすぐ退院していいよっていわれて。……ごめんね」
「…」
私がしゃべるたびに彼の大きな目はうるうると水がたまって、今にも爆発寸前だった。
なんで自分がこんな短時間で懐かれてしまってのかは分からないけど、余程一緒に遊んでくれるのが嬉しかったんだと思われる。

「あー、あのさ、経過観察でまた何日か後にここに来るから、その時時間があればまた一緒にする?」
これも本当のこと。先ほど診察のときにねんのためきてくれと言われていた。
その事を聞いた瞬間太陽くんは顔をあげて私に抱きついてきた。いきなりで驚いたものの、その衝撃はきちんと受け止めることができる。
私のお腹に顔を埋め、ぎゅっと服をつかみながら「絶対だよ!!!」と必死な声が聞こえてきた。

ごめん、流石の私もこれにはオタク心というか母性というか、なにかがくすぐられずにはいられない。
ギュンッ!と明らかに心臓を鷲掴みにされた音が聞こえた(気がした)

可愛すぎないか?え?私中学生だし、これ犯罪になってないよね?大丈夫だよね?
恐る恐る両腕で彼を優しく抱き締めて「じゃあ約束だね」というとお腹のあたりで首を縦にふりながらズビと鼻をすする音が聞こえた。


次の日玄関にはお父さんもお母さんも迎えにきており、太陽くんが看護師さんと一緒にお見送りにきてくれた。本当になんでこんなに懐かれたか今でも謎だが悪いきはせず、私の短い入院生活は終わった。



―――

次の日からバリバリ野球部で精をだす私。

既に事の経緯は説明されており、退院後くらいは休めといわれたが、体がうずうずして野球をやらないと逆に悪化しますと押しまくった結果見事に練習に参加させてもらった。
久々に握るボールやバット、グローブにコンテナ、トンボやタイヤや兎に角沢山の機材全てが愛おしくてその日一日人生で一二を争うほど幸せな時を過ごした。
やはり平和が一番というか、野球が一番。野球最高!


―――

サッカー部のメンツからちょいちょいメールがきていた。といっても連絡先を知っているのはごく一部なので返信に困るくらいとかそういうわけではないのだが。

流石に連絡先になかったはずの土門や鬼道からメールがきたときはめちゃめちゃ驚いたけど。(松野から聞いたらしい。尚、鬼道のメールには円堂が打ったであろう文章も追記してあった。最後の名前が遠藤になってたから多分慌ててたんだと思う)
この二人は元々帝国の生徒だし前から気にかけてもらっていたが、まさか終わってからも心配してくれるとは…面倒見がいいな。

サッカー部で最も仲がいいであろう松野からのメールは一番簡素だった。でも逆に気をつかわれてる感はあったから、やつなりに悩んだ結果の文章なのだろう。


―――

明日は準決勝。
そんなワクワクする試合を目の前にして私は今日予定していた経過観察のため病院へ訪れていた。

診察も順調に終わり、太陽くんとの約束を果たすため看護師さんに呼びかけ廊下を歩いていたときだ。見知った人物を見つけた。

「豪炎寺?」
「苗字」

看護師さんが気をきかせてくれて、太陽くんの病室だけ教えてくれ、少しだけ立ち話をすることに。
「豪炎寺怪我でもしたの?」
「いや…妹が入院してるんだ」
「そっか、お見舞いか」
大して仲がいいわけではないから、会話が途切れてしまう。しかも身内のお見舞いというデリケートな内容に迂闊につっこみずらい。
「苗字はまだ体調が優れないのか?」
「え?ううん、全然。寧ろめちゃめちゃ元気。経過観察で来ただけだよ。もうなにも問題ないから今日で病院通いも終わり」
「そうか、よかったな」
「うん!」
改めてみると豪炎寺は爽やかイケメンだな。薄く笑っただけなのに輝いて見えた気がした。
とにもかくにもお互い用事があるわけでその場はあっさりお開きになり私は目的の病室へ向かった。

無事太陽くんと再開し、早く外いこ!と急かされながら玄関を目指すも、地震のような一瞬の振動と、大きな音が響く。
流石の自体に私たち二人以外の患者や看護師達もピタリとその場で動きを止めて、何事だと辺りを見渡す。
地震でもないし、雷でもないしでも明らかに何かが起きたのは分かる。なんだろう。嫌な予感がするというのはこういうことなんだろうな。
暫くすると病院のアナウンスが嫌に大きく響いた。

《スタットコール、スタットコール、院内の職員は今すぐ正面玄関へ集合。》

少し焦ったようなアナウンスが二、三度繰り返される。周りの看護師達はバタバタとはしって行ってしまった。
普段起こらないようなことが起こっていて私も太陽くんも不安を感じずにはいられなかった。

「外行くのちょっと待とう」
「う、うん」

この騒ぎの発端が、まさか宇宙人で、しかもサッカーで色んな学校を破壊しまくるなんて誰がそんなの予測できる?


20230214
改めていいますが、原作風なので、色々目をつぶってください



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