胡麻だればみ



うちの本丸は月に一度の”誉を一番とったのだーれだ賞”がある。略して”ほまダレ”。クソガキどもに「ゴマダレゴマダレ」と馬鹿にされたが、「馬鹿にした奴らにはこの賞は適用しません」というと、直ぐに黙ってしまうほどものすごい賞なのである。
説明すると、月に一番“誉”をとった者には出来る範囲で好きな物を買って上げるというものである。現世という場所にまだまだ興味が尽きない彼らは日頃から、あれいいな、欲しいなという言葉が目立つ。そのため、ほまダレ制度を設けたのだ。
ちなみに毎日の誉に関してはお菓子か、好きな夕御飯にするということにしている。
全く私は優しくていい審神者だ!!

さてさて、今月ももうすぐ終わり、ほまダレ受賞者候補の確認をしておこう。

「ふむふむ・・・・ほぉ、今月は鶯丸じゃん。あ、あれか先月からほしいって言ってた茶葉のためか、はぁああ納得だ。んお?いや、骨喰も互角な感じだな」

これはどっちになるか最後までわからないかもな。
でも、もし骨喰になったとして・・・・欲しいものってなんだ?どこの本丸の骨喰も同じだと思うけど、彼は無口で、大体鯰尾と一緒にいるから、余計に彼の主張が見えてこない。それに今思い返してみれば、差しで喋ったのって殆どが事務的なことだ。
うう、そう考えると彼に直接「今欲しいの何〜!!」とか聞くの気まずくなってきた。

だがしかし、ずっとこのままの状態でいるのはよくない!!これを期に“骨喰と仲良くなろう計画”を実行することにした。

・・・・・

まぁでもあれだ、最初は鶯丸の方に何が欲しいかリサーチしてこよう。別にあれだぞ、ビビってるわけでも、怖気づいてるわけでもないぞ。ちょっと時間がかかりそうだから、先に一瞬ですむ鶯丸の方行くだけだし?

「ということで、今月ほまダレ候補なんだけど、何欲しいの」
「新しい茶葉だ」
「はい」
「・・・・・」
「・・・・・」
「次の候補者のところへ行くんじゃないのか?」
「うーぐーいーすーまーるー!!!!」

部屋でお茶を飲んでいた彼への用事は終わったが、私自身諦めが悪いらしい。
ずずっとお茶をすする彼の腰へ抱きつけば、片手で頭を撫でてくれるのが分かる。なんだろう、ドラえもんのおばあちゃんの回を思い出すよ。

「いったいどうした」
「骨喰と仲良くなろう計画を立てたのですが、誰かの後おしが欲しいです」
「わかった、頑張れ」
「冷たい!!私のちゃんちゃんこが意味を成さないほどに冷たいよ!!もっとこうさ、お前は出来る子だ、とか、俺が勇気を分けたから大丈夫とかくらいいってよおお!!」

腰でギャンギャン言っていると、茶をずずっとの飲みひと呼吸おいてからこう告げられる。

「そんなに元気なら、そのままで行けばいい。あと茶が飲めない」
「ええええ、てかめっちゃお茶飲んでる」
「早くいけ」

鶯丸は真顔だった。


・・・・・


「ということで、鶯丸めちゃ怖い・・・・」
「そうか、それは大変だったな」
「(普通に話してるじゃん)」

大人しく骨喰の元へ向かうと、やはり鯰尾もいて、二人はトランプでスピードをやっていた。凡人の私には、戦場でバリバリ働いている彼らの手さばきはヤムチャ視点のようあ感じでしか見えなかった。スピードというより、超スピードですね、わかります。
そして一勝負終えてから二人に話しかけた。
浮かない顔をしていることに骨喰は気づき、何があったのかと相談に乗ってくれた。
骨喰超優しい・・・

「ありがどう。そぢてこれからは、迷惑じゃなかったら沢山話ぞうね」
「ああ、改めてよろしく頼む」

微笑む彼は天使のようで、なんで私は気まずいなんて思っていたのだろうかと疑問に思うくらいだ。

「それで本題なんだけど、骨喰今月のほまダレ候補で、ほしいものって何かなと」
「ほしいもの・・・」

手を顎に当て考え始めた。しばらくしても考えた様子で、鯰尾がもたれかかるように突撃し、自分の欲しいものを言い始める。

「はいはーい!俺、厠のズッポンする奴欲しいでーす!」
「お前には聞いてない、しかもなんだそのチョイス!!もしかして詰まったの!?」
「え、詰まってませんよ?寝ている主のお腹にズッポンしまうぇっくしょ!!」
「やめろ、ってか汚い!!」

そんな漫才が終わっても考えているようだった。欲がないのか・・・さすが天使

「まぁ、まだ候補だしもし受賞したらその時にまた決めればいいよ。それまで自分が何が欲しいか、考える時間にすれば大丈夫」
「・・・そうだな。そうする」

二人と別れ、夕飯の準備へと向かった。


・・・・・


「はーい、では今月のほまダレ賞発表しまーす。どどどどどどどどど」
「相変わらずドラムロール下手だなぁ」ボソ
「聞こえてるからね、獅子王」
「どどどどどどど・・・」
「(やりなおすんですね)」

「どん!骨喰でーす!おめでとう!!」

鶯丸の湯呑はみしみし言ってる。骨喰は意外だったのか、目を見開いている。
鶯丸よ、君の敗因は詰の甘さだよ。それに私に対しての優しさが足りなかったね。(まぁ、誉の数はちゃんと骨喰が多いんだけどね。)

「さて、欲しいもの決まった?」
「ああ、あれからいろいろ考えた」

屈んで彼に話しかけると、耳に口元を寄せてくる。所謂、こしょこしょ話だ。欲しいものは皆に聞かれては困るものなのか?
ふむふむ、

「あーなるほどね。はいはい。大丈夫、明日には届くから楽しみにしてて!」
「ああ、わかった」

本当に優しい子だなぁと再確認する。周りのみんながなになに?と詰め寄ってくるが、私は早速、密林で目的のものを注文することに。
とりあえず、私は優しいから、優しいから!!鶯丸を慰めに行ってあげよう。

翌日、遠征や出陣が終わった皆は色とりどりのちゃんちゃんこを着ていた。
これは皆骨喰が欲しいといって購入したものだ。

「最近、兄弟たちが寒そうにしている。主の着ているちゃんちゃんこを本丸の皆にもと思うんだが」

彼はよく周りを見ているんだなぁ、と新たな一面をしれた気がする。
後に、ちゃんちゃんこはこの本丸に来た刀たちに一振一着支給するようになる。




鶯丸:握力ゴリラ
骨喰:スピードより豚のしっぽの方が得意
鯰尾:後にズッポンを秘密裏に入手する
獅子王:じじい高校生



[ 87/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -