3、補習と並中の本当にあった怖い話

中間テスト、理科と英語で赤点をとった…。家に帰ったら親じゃなくて幼馴染みに怒鳴られる、なんならいつも吐く毒も三倍増しになる。
ちゃんと勉強見てもらってたし、宿題だってサボったことないのに、それなのに赤点。
立ち直れないくらいへこむ。
しかし、そんなとこへ追い討ちをかけてくるのが補講。

放課後、皆部活や楽しく放課後デートなんてしている中、私は寂しく教室で肩をおとしていた。
鯰尾くんと骨喰くんが何時ものごとく一緒に帰ろうと誘ってきたが、補講があることを伝えると「えー、俺でも五十点は取れたテストなのに名前赤点だったの?」
「終わるまで俺達は待っていよう」
「うん、そうだね。てことで教室で待ってるから終わり次第声掛けてよね」
さりげなくマウントをとられた。
そして補講なんて何時間もかかるかもしれないものなのに、よほど私と帰りたいのか平然と「待っている」と言ってのけた。ありえない。
あの二人の神経どうなってるの。逆の立場だったら私なら速攻帰りますけどね!

ムカムカモヤモヤ、よく分からないというか、色んな感情がぐるぐるしながらも補講の行われる教室へいくと、十人もいないくらいの生徒がおのおの好きな場所に座っていた。
どこに座ろうかと周りをうかがってるとばちりと視線が合う。沢田くんだ。あと隣に山本くんもいるし。
そういえば沢田くんは赤点常習犯だったなと過去の記憶をたどっていると、流石の陽キャ山本くん「お、苗字も補講?一緒に座ろうぜ」と純真無垢な笑顔で手を振ってくる。それにあわせて沢田くんもあわあわしてた。わかる。私も山本くんが隣にいてそんなこと言い出したらそうなるもん。
沢田くんに少し同情しながらいそいそと二人の後ろの席に腰かけた。

「いやー、苗字も赤点だったんだな。意外だぜ」
「はは、勉強したはずなんだけどね、なんでだろうね」
「目が死んでるよ苗字さん…」
「沢田くんもこれから同じくなるよ……」
「うっ」
「大丈夫だって、三人で協力すればあっというまだぜ?頑張ろうな!」

山本くんが眩しすぎて三分以上会話したくないです。嫌だよー、三人で頑張るとかじゃなくてとっとと終わらせてさっさとおうちに帰りたいよー!!!
でも実際問題補講で出されるプリント一人ですぐに終わらせるなんて出来る気がしない。
早く帰るにはやっぱり二人と協力するのが最善で、う、しょうがない。頑張るしかない。

「苗字さん、補講そんなに嫌なんだね……俺もだけど」
「?」

沢田くんがこそっと話しかけてきたけれども、そんなにも表情にでていただろうか。気づかないうちに泣いてたとか?
訳がわからず、どういうことかたずねると「いや、顔にでてたとかそう言うことじゃないんだけど…なんていうか、本当にただなんとなくそう思っただけで」と、落ち着きない様子だった。

本人はなぜか焦っているけどそれは図星で、沢田くんって人のことよく見てるんだなぁと意外な一面を知った。
「沢田くん…とにかく、早く帰れるように頑張ろうね」
「う、うん!」

程なくして補講は始まり、先生が今回のテストの解説等々した後、プリントがほどほど配られ私たち三人はない頭を必死に使い、夕暮れ前には解放されることになった。

山本くんは「部活に少しだけどでられるぜ!本当にありがとな二人とも!じゃあまたあしたなー」と先ほど見せつけられた笑顔の五倍輝く笑顔を振り撒きながら去っていった。眩しすぎて心臓が痛くなったのは言うまでもないだろう。

残された私たちは疲れたね、お腹空いたねなんてくたびれながら教室へ足を進めた。
しかし教室に入る手前で「十代目ぇ!!!!」と嬉々とした叫び声とともにめんどくさ男、獄寺さんが現れた。山本くんと別れてからの獄寺さんは濃すぎるんだってば!
獄寺さんは此方にご丁寧にガンを飛ばした後、沢田くんに鞄を渡していた。「え、きもっ」と思わず声にでてしまったが仕方がない。ただ持ってきただけならこんなこと思わないけど、渡すと同時に「鞄温めときました!!」なんていうもんだから。だって友達の域こえてそれはもう家来とかそう言うレベルなんですよ。

「あんだテメェ」

まぁ、そうですよね。聞こえてますよね。沢田くんが鞄を受け取ったのを確認してから獄寺さんは先程と比べ物にならないくらいの怖い顔で距離を詰めてくる。
ごめんなさい、許してください。正直以前会った紫髪筆頭の不良たちより怖い。獄寺さんの方は確実に殺すぞって雰囲気なんだもん。その気迫というのか殺気というのか、肌にちくちくと刺さる感覚がわかる。

「ご、ごく、獄寺くん!!ダメだよ、苗字さんはべつに悪気があって言った訳じゃ」
沢田くん、それは悪気しかない言葉だよ。
「けど、十代目」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、つい口が滑りました、本当に申し訳ありませんすみません許してください」
「あぁ??!」
「すいやせん」
「獄寺くん!!」

誰か頼む、助けてくれ。沢田くんの声を無視するなんてよっぽどのことだ。それだけ忠犬だと普段から言われているのに、なんでこんな事でこんなにキレ散らかしてるんだ。勘弁してほしい。

「あらま、名前の気配がしてるのにぜんぜん教室に入ってこないから見に来てみたら」
「名前に何か用か?」

普段あんなに鬱陶しい二人がこの時ばかりは菩薩に見えたのはもう仕方なのないことだ。
飄々として現れる鯰尾くんに私と獄寺さんの間に腕を割り込ませ守ってくれる骨喰くんといったら、いつもの十倍増しにかっこよくみえた。

「こいつが喧嘩うってきたからなんのつもりか聞いてただけだ。金魚の糞は下がってろよ」
「獄寺くんなりふり構わず喧嘩うらないで!!!」
「十代目ぇ……これは男として引けないときです」
「何が?!!」
「金魚の糞って俺達?え?君もそこの“ボンゴレ”の金魚の糞じゃん、ねぇ名前」
「なんで私にふるの?!?!」

何故かボンゴレという訳のわからないあだ名で沢田くんをよぶと更に獄寺さんは殺気を増していた。ほら!そうやって適当なことばっかりいってるから余計に話がややこしくなるじゃないか。

「大丈夫だ名前俺達がいるから何をいっても問題ない」
「は?!」
「また変なこと言ってみろ、木っ端微塵にするぞテメェ」
「ひぇ」
「あー、もうどうすれば良いんだよ!!」

私も沢田くんも完全に詰みです。
救世主に見えたこいつら全然話を収束させてくれない。むしろ広げてかき混ぜてるせいで、獄寺さんもどんどん血管の筋が浮き彫りになってきてる(血管破裂しそうになってる)

「ねぇ君たち、こんなとこで群れて何をしているの」

その声を聞いた瞬間、先程までのわちゃわちゃしていた空気は凍った。そして尋常じゃないくらいの冷や汗が全身の毛穴から吹き出してくる。
あの鯰尾くんですら表情は変わらないものの言葉を発さずに私の後ろへ目を向けていた。
ぎぎぎと回らない、いや、回るのを拒否している首をなんとか後ろへ向けると、いたのだ。

我が校の風紀部委員長、雲雀恭弥が……。
これが本当にあった怖い話か。

「用事がないのなら早く帰ることだね。けど、僕の前で群がってるところを見せたんだ。帰るのはもう少し先か、それか家でなくて病院へ行くことになるかも…ね!」

彼は歩みを止めることはせずに、私の脳天めがけそのままトンファーを振り下ろした。
あ、やば。死んだ。
瞬きすらする余裕もなく、ただただその衝撃を待った、

ガギッ!!!

音はするものの衝撃が来ない。
いつの間にか後ろにいた骨喰くんが前に周り、そのトンファーをなにか、ちょっと長めの棒?いや、よくみたらあれ刀…かな?で受け止めていた。え?刀???????

そのことに雲雀先輩は「ワォ」と声を漏らした。

「兄弟」
「OK、じゃ名前、退散しますよ」
「は?」

瞬時に鯰尾くんは私を抱え教室へ駆け込む。
沢田くんと獄寺さんは驚いた顔をしていたものの、いきなりの事で脳が追い付かず(私もだけど)ただ見ているだけだった。雲雀先輩に関しては完全に骨喰くんに夢中で此方を一ミリも見なかった。

駆け込んだのは良いものの何をするのかと思いきや、戸惑いもなく窓から飛び降りやがった。

「はああああああああああ?????????」
「あっはっは!!」

上から下へ降りたときの独特の感覚が襲ってくる。そんな最中何をしているのかようやく理解できた。理解できたけど、何でこんなことしているのかはまっったくもって理解できなかった。
バカなの?!バカか?!バカ!!!!!!!と怒鳴りたいとこだが、仰天ニュースもビックリの恐怖体験に声もでず腰もぬけて、鯰尾くんにすがりつくのが精一杯だった。

「あー、面白かった。ね、名前!」

一回痛い目見ろバカと心のなかで呪っておいた。

その後、私を抱えたまま近くの公園へ行き休憩していると、小走りで骨喰くんが三人の鞄をもってやってきた。
その頃には声も出せるし腰も治っていたので、丁寧にお礼をした。「えー?俺も頑張ったけど」なんてあざとくアピールしてくる鯰尾くんには「ふざけんなばか!!スゲー助かりました!!ありがとうございますバカ!!!!!」とお礼をいっといた。
めちゃめちゃ喜んでた。なんで。

今日一日で本当に色んなことがあって、もうくたくたで、色んなことに突っ込みをいれるのも忘れて家に帰った。
今日は絶対早く寝よう。そうしようと心に決め自室へ戻ろうとしたが、幼馴染みに見つかり、テストの結果を報告しろと脅されて赤点がばれて説教された。
ぜんぜん寝れなかった。


20220407




[ 25/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -