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話を詳しく聞いたところ、彼等はある拠点から部隊を組んでくるらしいのだが、そこがとんでもなく荒んで、強制的にやらされているとか。本来審神者は刀剣男士に力を貸し、共に敵を倒していく立場。上司と言う立場にはなるが、 彼らの審神者に関しては暴君といった方がいいだろう。重労働は勿論のこと、あまり手入れ(傷の修復)をせず、反抗するものならば“言霊”という力で強制的に動かす。彼等は折れてしまったが最後、その審神者の元には顕現出来ないらしい。つまり、刀剣男士からすれば、仲間と今生の別れになるかもしれないということ。彼らの口から出る言葉に思わず顔が歪んでしまう。そして、助けてあげなければという、使命感も出てしまうのだ。審神者を動けない状態にしてくれればこちらでどうにかするといっていた。言霊がある限り審神者を説得することも出来ないとか。
私が頼まれたことは、拠点となっている彼らの審神者の元へ行き、審神者を捕縛し、喋れないよう口を塞ぐこと。彼らの何人かは先にいって仲間にことことを伝えるようにしてくれるといっていた。
先にいったのは白い鶴丸国永、おかっぱの前田藤四郎、小さい蛍丸の三人。私達は三分後に遅れて行く予定だ。
 

…………
 

ダダダダと木造の屋敷、今剣を先頭に駆け抜ける。その後ろを何人かの刀剣男士たちがおってきた。言霊により操られているのだ。鬼気迫る顔をしていて、此方まで焦り顔が歪むが、前の彼は鬼ごっこでもしているのかと疑問に思うほどニコニコとしている。本当に状況を分かっているのだろうか。

「名前、このかどをまがるとかいだんがあって、そののぼったさきがさにわのへやです!ぼくはここであしどめしておきます!」
「分かった、気をつけて」
「はーい」
呑気だな。全力で駆け抜け階段を上る。外観を見たときから考えるときっと三階分。そんなに量はない、すぐにつくだろう。少しだが息が切れる。
手摺を軸にくるりとまわり、更にかけあがると、ひときわ立派な扉が見えた。開けるのも面倒で、スタッフを第二形態の薙刀にかえ、斬り倒した。
中を見据えると、そこには脅えているも怒りに満ちた形相の女がいた。服装は彼らと似たような白と赤の神聖な感じのもの。髪はハーフアップにされており、鈴のようなものが結あえてある。
「お前、こんなことしてどうなるかわかっているのか!!!」
「数々の悪行をしてきたあなたが言うな」
「黙れ!こいつを殺せ!三日月、一期!!」
すっと物凄い勢いで二人の男が斬りかかってくる。
「アイアンウォール!」
咄嗟に腰につけているチェーン型のARMを発動し、鉄の壁が目の前に現れる。危ない。もう少しで斬られるところだった。丁度いい、二人はこのままこの壁で囲って動けないようにしてしまおう。
「縛」
そういうとあっという間に壁は形を変え、二人を包み込むように四角いキューブとなった。
「なによこれ……」
審神者が信じられないようなものを見る目でそれを凝視していた。
「縛」
その隙に審神者の周りからも鉄の壁が生えてくる。それは体だけを包み込み、頭だけを自由にした。まるふで四角いキューブに顔がついているようだった。さて、口元はどうやって封じればいあだろうか。猿轡でいいかな?
はなせ、はなせえ!!とどなりちらす彼女に適当な布で猿轡をすると、あっという間に唸り声だけをあげるものになった。よし、これで一安心。あとは皆を呼ぶだけだなと、この部屋から出ようとした瞬間だった。
「……ありがとうございます」
先程まで一緒にいた今剣がそこにたたずんでいた。先程とは違い、儚げな笑みを浮かべて。
「ああ、今剣。今皆を呼びにいこうとお、もっ…………は?」
私が話しかける間に、彼は目にもとまらぬはやさで横をすり抜け、審神者の首を掻き斬った。首の動脈からぴゅーと血が吹き出し、転がった首はまだ少し意識があるのか、大きく目が見開かれぎょろりと動く。
「なにをしているの!?」
「ころしたんですよ?」
「なんで!!」
「このひとはいらないからです」
「話し合うっていってたじゃない!」
「ふふふ、そんなこといいましたか?あなたのおくそくではありませんか?」
「それは……」
たしかに、話し合うといっていたかと言われれば、そんなニュアンスのことを言っていただけで、ハッキリとはいっていなかった。
「ぼくは、ひとめみたしゅんかんからあなたに、さにわになってほしいとおもいました」
「なにいって…」
「あなたにはふつうのさにわとはちがう、なにかがあります。それに、」
ゆっくり近付いてきて壁に追い込まれる。ARMを使えばいいはずなのに、何故か体が言うことを聞かない。心臓のあたりを思いっきり捕まれ、顔がぶつかるくらい近づく。
「たましいがとてもきれいなんです」
うっとりとして、なにも写さない赤に恐怖を感じた。逃げようにも逃げられない。そう感じてしまう。
「ふふっ、つーかまーえたっ」
にっこり微笑む彼に、抱きつかれた瞬間、すべてが終わった気がした。
 



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