07

「そんなことない!!」

動き出した影の一人が、苦無いで攻撃してきた。咄嗟に鉢屋三郎からのき、後方へさがる。よくよくその風貌を観察すると、鉢屋三郎と瓜二つの顔がそこにはあった。
噂で聞いていた不破雷蔵というのが彼なんだろう。
彼の後ろには鉢屋三郎を必死で守ろうと、群青色の忍者服を身にまとった子達が三人。それぞれ武器を構えこちらを睨んでいる。その中の一人には見覚えがある。あの日鉢屋三郎と一緒にいたボサボサ頭の少年。彼は術からすぐにとけた人物の一人だったのか。

鉢屋三郎の表情はうかがえないが、また目の前の不破雷蔵へ視線をうつす。

「確かに僕たちは天女に踊らされて、学業をおろそかにし忍者の三禁も関係なく遊び呆けた。けど、自分達の過ちに気づいてまた前に進むんだ!そこに、三郎もいなきゃ、意味がないじゃないか!

僕はどんなに三郎が道を踏み外しても見捨てたり、切り捨てたりなんかしない!
だって、大事な仲間だからっ…!!」

仲間意識が強いことは、私だって負けてはいないが、見るからにそれをこえる絆なのだろう。
この言葉は、果たして後ろにいる彼に響いたのだろうか。

持っていた針をしまい、殺気を収め敵意のないことを示す。

「鉢屋三郎。今の言葉聞こえた?
君の大事なもの、もっとよく考えたらいいよ。

あと、君達。いくら心配だからといって今の危険な状態の彼に近づくなと、先生方から言われていたと思うんだけど」
「…すいません」

警戒は解かないまま謝罪の言葉が聞こえる。私のことも先生方から聞いているはずだから、そんなに警戒されると動きにくくなってしまう。再度先生の方に伝えておこう。
それにしても、鉢屋三郎の殺気は先程からほとんど感じられない。このままかえって寝たいんだが、彼をおいて帰ってしまうのは危ない。一緒に学園へ戻りたいのだが困ったなぁ。

頭をがりがりかき回しため息をつくと、何やら彼らの方でざわざわし始める。
何事かと思いつつ、ちらりと見やると問題の彼が立ってこちらへ歩いてきているではないか。
流石の私もこれには驚きだ。

敵意はなさそうだが、寧ろ今はその状態が怖い。
警戒を強めごくりと息を飲む。

彼は顔をあげる。
かちりと目が合う。暗闇だから瞳は真っ黒。写りこむ私の姿なんか見えない。
彼の言葉を待った。
なかなか話始めようとはしない。いいよどんでいると言うことは、多少なりとも自分の意思が戻りかけているということなのだろうか。


「すまなかった…!」


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