03

時は既に丑三つ時、森の動物たちも静かに寝静まる頃。私はひっそりと動き出した。
忍術学園の場所は三人に教えてもらい完璧だ。それに猪名寺くんから天女の似顔絵も見せてもらった。そして、三人にはこう伝えた。

――みんなが寝静まる頃に口布を覆ってこれに火をつけて。学園のいたるところにつければ、大抵のものは皆体が麻痺し始める。毒ではあるけど、しびれ薬だから死に至ることはないよ。
その間に私は・・・

今日の夜は月が隠れるような分厚い雲が出ている。あの時とは違い、忍者にとってすごく動きやすい環境である。
学園の近くにある一際大きな木の上に立ち見下ろす。微かにだが、煙が漂ってきている。さて、そろそろ動きましょうか。
あの場所へ帰るために!


・・・・・・・


学園の中への潜入は容易だった。私の指示通りに煙をまいてくれたみたいで所々から小さなうめき声が聴こえてくる。
だが、気になるのはこの異臭。私が渡した煙にはこのような匂いはない。なのにこの匂い。天女も気になるが、火器の類があっては困るため臭いの元へと向かうことにした。

そうして見つけたのが一つの部屋。流石に原因の場所まで来ると口布をしているしていないに関わらず鼻がひん曲がりそうになる。だが、ここはいたって普通の部屋。こんなとこに火器がというか、ここまで来るとこれが火器の匂いだということもまずないだろう。一体これは、
眉をひそめ、慎重に襖を開ける。
そこで目にしたのは苦しそうに倒れている、一人の女と、二人の男だった。

近くまで寄ると、天女だということに気づく。

「なんだお前は!」
「天女様を狙いに来たやつか!」

足元で惨めに蠢いている、男たちは必死に声を張り上げるが、肝心の体は動かないらしい。
しかし、状態を見る限り、三人で夜を楽しんでいたようだ。天女から匂いが来るがその他にも、あの行為の独特の匂いが漂っていることに気づく。まさか、いろんな生徒を取っ替え引っ替えしているのではないだろうか?そうだとしたらなにが天女なんだろうか、馬鹿馬鹿しい。とんだ阿婆擦れ女の一人に過ぎないではないか。

女も苦しみながらようやっと顔を上げた。目があった。そしてその苦しそうな白い綺麗な顔からもっと血の気が引いていった。死人みたいだ。

「やだ!殺さないで!!」
「いえ、頼まれたことなので」
「いやいや!助けて三郎、ハチ!!」

必死に手を伸ばそうとする天女。更にその天女の名前を叫ぶ、三郎とハチという少年。
さて、こんなことさっさと片付けてしまおう。手元の毒針を刺そうとした瞬間、後ろから誰かの気配がして、その場を退いた。

バキバキ!ドガァ!!

激しい音を立てて壊れる襖から黒い塊が突進してきた。どうやら動けるものもいるみたいだ。教師か?それとも六年生とやらか。その攻撃をいなすためくないを取り出した。
一撃がそれなりに重いが、まだまだ。
ぎらりと光るその瞳はまるで獣そのもの。本気出した時の佐助くんみたいだと思った。
煙で麻痺がある程度きいているみたいだが、こんな感じで何人もこられても困る。さっさと終わらせよう。

「甲賀流投術 針鼠」

懐にある針が私の背を回り天女へと飛んでいく。

「しまっ!」

目の前の男からそんな声が漏れ、瞬時に甲高い悲鳴が聞こえた。
天女だったものは、針鼠のように全身に針をまといそこに転がっていた。

終わった。

これで、みんなのもとへ帰れる。ホッと胸をなでおろしながら意気消沈している男たちを見る。
未だに何が起こったのか信じられないようだった。さようなら、忍術学園の皆さん。
できることなら、その元の状態というのを一目見ておきたいとも思ったけれど、私は直ぐに帰りますね。





そうなるはずだった・・・・。



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