02



それからくる日もくる日も天女についての情報を聞き回った。勿論、同業者に会い、戦闘になることだってあった。
それでも、軽くひねり潰せるくらいには弱かったため、然程苦労はしなかった。

そして集めた情報をまとめるとこうだ。

・天女は忍術学園という、忍者を育てるところにいること
・天女は半年くらい前からいる
・天女はなんでも願いを叶えてくれる、ただし、条件付きで
・天女の肉を喰らうと不老不死になれる

くらいだろうか。色々突っ込みたいところもある。
まず、忍術学園とはなんだ。里のことではないのか?それに、流派だってあるはずだ。いや、むしろ忍者ということをあまり悟らせないため?それでも堂々とした名前過ぎるだろう。よくわからない……。
聞いたはなしで、天女の肉を喰らうと不老不死になるということ。そのために名のある大名やたちが戦をし始めているとか。忍術学園を攻めればいいと思うのだが、そういうはなしを聞かないということは、忍術学園というところは、人を寄せ付けない何かがあるということ。
仮にも忍者を志すもの。手練れがいるということだとは思うが、天女という存在も関わっている気がする。

情報をまとめ、自分の持つ武器を念入りに確認した。明日ここをたち、忍術学園の天女のもとまで行く。
駄目元で、私をもとの時代へ返してもらうのだ。



…………



森の中をさ迷い歩く。こっちに来てから手なずけた鷲も、まだ帰ってこない。見つかっていないのだろう。
忍術学園と堂々と名乗っていても、場所までは悟らせてないか。
その時、ふと、人の気配がした。地面へ耳をつけ足音を確認する。三人か。木上へ身を伏せ、その人物たちがどこにいるか探る。だが、その苦労も省けた。ガサガサと茂みが動き、そこから三人の子供が出てきた。どの子も背中に竹かごをしょっており、中を注意深くみると、それは薬草ばかりだった。

「(子供が薬草を集める?)」

薬屋の弟子か、もしくは……忍術学園のものたちか。

「左近先輩、全然見つかりませんね……」
「見つかんなかったら、また僕たち天女様に怒られちゃいますぅ〜」
「そんなことわかってる!でも、ここら辺なんだ。伊作先輩も、数馬先輩もここら辺であの薬草をとってたんだよ!」

なんだか、もめているみたい。それに、確実に忍術学園の子ということがわかった。子の子達を見張っているようなものもいないし、ちょうどいい。

狙いとタイミングを定めて、まず、年下であろう眼鏡と顔色の悪い子を縛り上げる。声を出さないよう手拭いをを突っ込む。
そして、

「動くな。」
「!?な」
「君達は忍術学園の子たちでいいね。」

恐怖からか体の震えが伝わってくる。私だって子供相手にこんなことはしたくないが、しょうがない。

「な、ななんですか」
「学園に天女がいるというのは本当?」

少年は驚いた様子を見せてから、はいと、小さく呟く。
後ろの方でうーうーと唸っているのが聞こえるが、やはりあの年の子。まだ学園にはいりたてなのだろう。抜け出せない。

「あ、あの、僕からも一つだけ聞かせてください。」
「…いいよ」
「貴方は妃あんこさんですか…?」
「?!」

どうして私の名前を!?
まさか私の素性がすでに忍術学園にばれて?いや、そんなはずはない。常にいろんな偽名で渡り歩いてきた。それにここは私のいない時代なのだろう!?

「……そうだよ、でもな」
「お願いします!!!」
「え」

肯定をした瞬間だった。左近と呼ばれていた少年はくないのことなんかお構いなしにこちらに振り向き、泣きながらすがってきた。

「天女を!!!天女を、殺してくださいっ!!!」

なにか事情があるのだと思い、彼らの拘束を解き話を聞くことにした。不意打ちも考えたが、こんな子達にやられるほど私は弱くない。ので、気を張りつつもという感じだ。

「さて、まずは名前を聞かせてもらってもいい?」
「二年い組の川西左近です」
「一年は組の猪名寺乱太郎です」
「一年ろ組の鶴町伏木蔵ですぅ」
「私は妃あんこ。何故あなたたちは私の本名を知っていたの?」
「僕が代表ですべて話します」

そういって手をあげたのは川西くんだった。

「貴方の名前を知っていたのは、貴方を僕たちが呼んだからです。」
「(呼んだ?)」
「半年くらい前、忍術学園に天女が落ちてきたんです。天女というだけあって凄く綺麗な人で、学園のほとんどの人が魅了されていきました。天女も満更ではなくて、毎日僕たちの先輩方を周りに侍らせてなに不自由なく暮らしています。学園は一年生から六年生まであって、六年生が一番プロに近い学年です。僕たち二年と一年は天女からみれば邪魔物らしく、ほとんどの雑用を押しつけられます。忍術学園は今、正常に機能していません。僕たちも焦っていたんです、噂や伝承を調べ始めるくらいには。
そして見つけたのが、ある本でした。」
「それで、私を呼び出したと?」
「はい。簡単に説明しますと、願いを叶えるまじないというものがあって、それを手順通りやったら、小さな切れ端があって。そこに妃あんこ呼び出し完了とかいてあって。」
「だから、私のことを知っていた、と」

にわかに信じがたい話だが、実際に身に起きているのだ。信じる信じないの話でもない。

「私はその天女を殺せばもとの場所に戻れるの?」
「はい、僕たちの願ったことを叶えてくれれば、その者は消えるとかいていました。なので、そうだと思います」
「そう……」

そして、さっきまで黙っていた一年生の子達が口を開き始めた。それはさっきまでの川西くんのようにぼろぼろと涙をこぼしながら、私の服をつかんだ。

「おねがいじます!!」
「天女を消して、先輩方を!」
「もどの、にんじゅつが、がぐえんに!!もどじて……くださ、い!!」

その姿を見てか、川西くんも同じようになき始め、頭を下げた。
こんなにも懇願されるのは、慣れている。特に人を殺すときなんかには、みんなこうなってしまう。それを無視する事が出来たけれど、今は違う。
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。どうにかしてあげたいと、思えてしまうのだ。

「わかった。」

そういうと、ありがとうございますと、更に泣きはじめ、収拾がつかなくなり、しばらくのあいだ彼らの背中を撫でたあげることしかできなかった。



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