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目が覚めた。ここはどこだろうと頭を悩ませていると、ガサガサと草むらが揺れる。警戒していると、見覚えのある鼬が顔を出す。あれは雨春?
「あんこ!」
頭上からあの、求めてやまない声が聞こえたと思うと、それは私の体を包み込んだ。懐かしい、森と、お日様の匂い。
どうやら無事に帰って来れたみたいだ。
「ただいま」
私の体には、あの世界でついたはずの傷は一切見当たらず、時間自体も三日しか立っていなかった。
あっちの世界にいた証拠なんてものはどこにもなかった。
結局、平行線のように交わってはいなかったのかもしれない。
20180108
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