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「面会、ですか?」
 
大きくてつり目気味の瞳は、さらに大きく丸くなる。ふむと首をかしげたことにより傾げたことにより、さらさらとした髪はするすると肩を滑り落ちる。
 
…………

綾部喜八郎の先輩にあたる立花仙蔵は、わざわざ私を探しだし礼をいいに来た。滅多に見ない六年生の登場に少し驚いたが、彼等もまた、絆が強いということ。天女の件で心身ともに鈍ったため、必死に修行に励んでいるときいていた。だから正直なところ、それ以下の学年のように過剰な馴れ合いはないと思っていた。だが、礼をするためだけにここまで脚を運ぶということは、六年生であってもそれは変わらないということ。そして、私も丁度いい機会だと思い、残りの二人に関して聞きたかったことをいくつか質問してみた。
天女に夢中になっていたときは、やはりといっていいのか善法寺伊作が一番心酔していたらしい。何処にいくにも一緒。常に情緒不安定で、しまいには天女を自分のものにするための媚薬や惚れ薬、周りのものを消すための毒薬なんかを作り始める始末。ああなっているのも頷けるほどの状態だったようだ。しかし、彼とは対照的に七松小平太はそこまで豹変しなかったらしい。彼はいつも本能のままに生きていて、周りに有無を言わさない。だが仲間や後輩たちに対しての想いは強く、身を呈してでも助けたり守ったりする男だとか。天女が来たときは確かに心酔していたものの、後輩や仲間に対しての態度は差ほど変わらなかったという。
 
「今思えばあれは…新しい友達でもできたような、そんな感じにも、見えましたね。
まぁ、女性として意識もしていたようですが」

彼らの大切なものはやはり後輩と仲間、忍術学園ではないかと。そういうことなら、またあの二人のように他の生徒たちの協力が必用になるかもしれない。
ああ、そういえば綾部喜八郎は少し気になることをいっていた。
 
「面会、ですか?」
「ええ、貴方か、若しくは……他の生徒。誰か行った?」
 
考えるそぶりも見せず彼は不思議そうに即答した。
 

「我々、残りの六年は一度は行きました。四人で。戻るかもという期待と、心配とで。後は個人の判断なのでそれ以上のことは知りませんが」
「そう」
 
中在家長次が何度も面会しているのを知らないのか?

「中在家長次が頻繁に面会しているということを聞いたの」
「!」
「彼は、元からそういう人間なの?もし……もしだけど、彼が七松小平太から影響を受けていたら?なんてことも、考えられないわけではないの。だから、出来たら彼におかしなとこがないか教えてほしい」

反応からして知らなかったこと、だというのは予測できる。
 
「最近の長次は天女が来る前の状態に戻ってると思います。授業も受けているし、修行もしている。委員会の活動もこまめにしていました」
「そう…ごめんなさい。流石に行きすぎた考えだった」
「長次のことを知りたいなら図書委員にも聞いてみるといいですよ。六年生はたぶん俺と同じことをいうと思いますが、後輩から見た感じでは、また違うかもしれないので」
「分かった、ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」

お互いに頭を下げ、それぞれ持ち場に戻った。
さて、あの二人、一筋縄はでいかない。どうしたものか。明らかに鉢屋三郎と綾部喜八郎よりも厄介だ。こんなとき仲間がいたら…と、思ってしまう私はまだまだ未熟だ。
 

…………
 

忍術学園から少し離れた森の中。目の前には三人の忍者が倒れている。天女が死んだかどうか確認するための偵察隊だろう。しかし、予想していたよりも早く来た。これは少し不味いかもしれない。私の知らないうちに、色々と動いているということは、情報が既に出回っている可能性だってある。そはらに偵察隊が三人というのも引っかかる。もう少し人数はいてもいいくらいだ。もしかすると、他の場所に身を潜めているのか?
私だけが動いているわけではない(忍術学園の教師たちも見回りなどはしている)が、不安だ。
天女の噂を信じるくらいだから、頭はさほど良くないことはわかる。だからこそなのだ。愚君ほど恐ろしいものはない。常人には理解できない行動をとってしまうのだから。




 

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