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「おお、来たかの。今回のこと見事じゃった」
「はい」
「流石じゃ。もう二人目も戻してしまうとは・・・こんなに優秀ならこの学園で雇いたいものじゃ!」
「はあ」
「あんこさんありがとうございましたー」
「あ、はい」

和気藹々としてる学園長に、マイペースぶりを遺憾無く発揮する綾部喜八郎。これはこれでやりづらい空気だ。

「今後もよろしく頼むぞ!」
「はい」

報告も終わり部屋を出る。朝ご飯もまだだから食べに行こう。今までの二人は夜中に戻ってしまうため朝一の報告になってしまう。あの学園長は話が長いから、なかなかご飯にありつけないのが辛いところだ。

「あんこさん待ってください。一緒に食べませんか?」
「いいけど」
「わーい」

本当に喜んでいるのだろうか。というか一緒に食べて嬉しいのだろうか。まぁ彼はあの牢の中でもそこそこの意識は保っていたから、色々聞けるかも知れないだろう。
それにしても朝だというのに、なぜ彼はこんなにドロドロなのだろうか。昨日のまんま・・・というわけではない。髪だって綺麗にゆわれているし、血も滲んでいない。まさか朝から穴掘り・・・?なんてことはないか。そんなに好きなこと、いやあるのか?

・・・・

食堂で黙々と食べていると、みんな綾部喜八郎に気づくようでゆっくりといれないようだった。私のは順当に減って行くも、彼のご飯はまだほとんどが残ったまま冷めてきている。色々も聞けないか。それにこれから彼はこれまで参加できていなかった授業や実習がみっちり入っている。うーむ。まぁいっか。大切なもので治ると確信を得た今なら、あとはそれを探して本人につきつけるだけ。
お盆を持ち、「先に行く」とつげ早速情報収集だ。

「待ってください!」

渡り廊下を渡りきるそのとき綾部喜八郎が大きな声を出してこちらへやって来た。驚いた。あの短時間で全て食べきったのだろうか。にしても何故?

「どうしたの?」
「これだけはいっておこうと思ってたことがあるんです」
「?」
「実は牢にいた頃、七松先輩のところによく中在家先輩がきて何かを喋っていたんです」

七松小平太は一番拘束が厳重だった彼のことか。そして中在家とはきっと中在家長次だろう。確かそのふたりは同じ部屋で過ごしている、いわば親友同士と聞いている。というか、六年生でも監禁させている者には、面会許可が要るはず。

「よく・・・ね」
「あの無口な中在家先輩があんなに話すのも珍しいなぁと」
「そんなとこまで気が回ってたのね」
「ほかの事でも考えて気を紛らわしたかったんですよねぇ」
「とにかくありがとう」
「はーい」

無口な彼が話す訳。それは普通に考えたら、元に戻って欲しいからと語りかける親友の図なんだろうが・・・。

何か嫌な予感がする。




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