09

鉢屋三郎の実力を見せてもらうため、授業が終わってから五年生の長屋の近くに来た。
各学年の長屋があるわけだが、その周辺は鍛錬で自由に使っていいとのこと。きちんとした場はほかにあるのだが、ここでは簡単な組手や兵法、授業の復習などと出来ることは限られているらしい。

「さあ、見ていろ私の実力を!!」
「・・・・」
「わー、三郎張り切ってるなぁ」
「おほー」
「ねぇねぇあんこさんお団子食べる?」
「豆腐もあるのだ」

私の横に座ってワイワイやっている彼ら。昨日まではあんなに敵意むき出しだったくせに。
手のひら返しすぎないか?
それにお団子はまだわかる。豆腐って何?

「うるさぞお前ら!私が今見てもらうのに、全然集中してもらえていないじゃなか!!」

ぎゃーぎゃーと幼児のように騒ぎ始める鉢屋三郎は本当にめんどくさいやつだと思う。
きちんと見ていると伝えて催促する。そうすると渋々とだが始めてくれた。

瞬きを一回一回するたびに目の前には、違う人間が立っていた。
確かにこれはなかなか・・・。みるみるうちに色んな人物へと変わっていく。
そして最後。こちらを見てにやりと笑い変装したのは。

「天女・・・」

隣で誰かがつぶやいた。
私も覚えがある。あの暗闇の中でうっすら見えたあの顔、仕草、体。
それは正しく天女そのものなのだろう。

「どうだ?これでも俺は役不足か?」

元の姿に戻り自信満々に聞いてくる。プライドはまた戻ったのか。
だが、期待通りだった。

「昨夜のこと、改めて謝る。ごめんなさい。実際に見てみたら、うん、すごかった。
私に力を貸しくれる?」
「ふん、当たり前だろう」

偉そうだ。だが、これくらい自信を持ってくれているなら本番でも失敗などしないだろう。
手を差し出し固く握手をかわす。

「それじゃあ」
「ちょちょちょとまって!」

手を解いたあとその場から去ろうとしたら、服を捕まれ止められた。
今度はなんだ。用は済んだはずなんだけど。

少し呆れ顔で彼らの方を振り向くと、すぐさま声が飛んできた。

「どこに行くんですか?」
「仕事なんてほっぽいて俺たちとあそぼーよ」
「まて!俺の変装はこれだけじゃないんだぞ!絶対適当に流したろ!!!」

めんどくさい。(特に鉢屋三郎)仕事はほっぽり出せるはずがない。学園側から責任を持って請け負っていることだし。中途半端な状態で彼らを戻しても、その先何かあっては大変だ。
それに今から善法寺伊作を戻すための情報収集をしに行くところなのに。彼らに情報収集できればそれはそれで一石二鳥だが、関わりは少ないだろう。それならあの時の保健委員会の子達に話を聞いたほうが有益だ。

というか、なんでこんなに懐いた?

弁解するのも時間がかかりそうだと判断し、煙玉を使ってその場を離れた。
多少体が痺れる成分も混じっているから、直ぐにはおってこれないだろう。

「全くわけがわからない・・・」

溜息を吐き保健室へと向かった。




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