■ラブアパートで夢うつつ
ん? 私、なんでラブホなんかにいるんだ? ドラマなんかでしか見たことないけど、多分ラブホだ、これ。
目の前にいるのは、えーっと、最原くん。最原終一くんだ。
彼は顔を赤くしてこっちを見ている。何かを期待しているような。
そうだ。この世界は、私の理想の世界。夢の世界だ。
誰も死んでいない。平和な世界。
それで私は、彼と付き合っている。優しい恋人である、最原くんと。
「最原くん!」
夢心地のまま、私は彼に抱きつく。心配することなんて、何もない。
「……最原くん、私のこと、好き?」
「うん。……好きだよ、君のことが」
その言葉を疑う必要もない。だってこれは、理想の世界。夢の世界だ。
そして、最原くんはおずおずと抱き返してくれた。
そう。これだけでいいんだ。私は。これだけで私は、幸せなんだ。
みんな生きていて、私も生きていて、彼が生きていてくれるなら、それでいい。
この温もりが感じられるなら、それで――
そして私は目が覚めた。
「うーん、頭痛い……」
モノクマアナウンスでの目覚めは最悪だ。ここはコロシアイの中で、もう何人も死んでいて、そして絶望の中。控えめに言っても最悪だ。
「……でも、ちょっといい夢を見たような気がする」
内容はあまり覚えていないけど、これが私への救いかもしれない。
このコロシアイの中で、心から幸福であることなんて、ほとんどないのだから。
夢の中でくらい、幸福な気分になっても。それくらい、いいよね?
その後、私を見た最原くんは、あの夢の中のように真っ赤であったことは、また別の話。
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