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春の某日。桜の蕾が今にも咲きそうに綻んだ頃、一組の男女がめでたく祝言を上げた。
天人到来の折に伝来した、ウェディングドレスと呼ばれる白い礼服に身を包んだ花嫁。清楚な顔には薄く化粧が施され、桃色の頬の鮮やかさが幸福の証のように思えた。
「……へえ」
そんな花嫁を見た花婿の最初の一言である。
「それだけアルか? 他に言うことねーのかヨ」
花嫁は不満が半分、残りの半分は期待を込めて花婿を見つめる。もっとちゃんと褒めて欲しい。
「やァ、馬子にも衣装だなと思ってよ」
そう宣う花婿の方は、これも天人伝来のフォーマルな黒のタキシードだ。童顔なためどこか初々しい印象が抜けない。
「もっと普通に言えないアルか?」
女心の分からない発言の結果、花婿は踵の高いヒールで爪先を思いっ切り踏まれることとなった。ぎゅむぅ、と音がした。
「いてえよ」
この有様だ。結婚生活が始まったらどうなるのだろうか。
「このゴリラ女」
「なんだと性悪」
因みに、二人の会話は極々小さな声で行われている。
何故かと言えば、今が式の真っ最中だからだ。
この日のために借りた式場で、二人のために集まった参列者の注目を浴びながら、子供じみた舌戦を繰り広げているわけだ。
当人たちはバレないように喧嘩しているつもりだが、参列者の大半はとうに分かっていた。
「変わらないな」
銀時が呆れて言えば、隣のお妙はひどく嬉しそうに笑う。
「神楽ちゃんたちはあれでいいのよ。きっと素敵な家族になれるわ」
山もあり谷もある人生。時には大海に迷い、二人が離れ離れになることもあるかもしれない。それでも一緒に生きていくと決めたのだから。
「あの子たちって強いのよ。銀さんも知ってるでしょ」


2013/06/17 13:42

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