08

「そういえば言ってなかったね」

 ふと内容を切り替えティアリアは手を叩いた。

「ここ、A-4で暮らすモノは貴方をあわせて全部で6体。リト兄、ミカ、ミュイリカ、サメヤ、そしてシャルネと私。ここの皆は優しいから、きっとシャルネもすぐに慣れるはず」

 ここの皆はということは、人形界にも性格はあるようだ。
 そう理解するのと共にして、ここ以外の場所に興味を持つ。他の場所にも行っていいかと、…その内容を言語化しようと口を開いたのと同時にし、ティアリアは目を細める。

「行ってらっしゃい」

「え、」

「あの光が沈みかけたら、戻ってきて」
「あ、何で、言おうとしたことが分かったの」
「………勘…かな」

 勘などで括れる話ではない気もしたのは気に止めず。
 質問ばかりするのも彼女には可哀想だとそう判断したシャルネは廊下へ向かった。

 探索。

 あの光と言ったティアリアの指差すものは前いた世界でいう太陽だろう。
 名前と行動それ以外の記憶は存在する脳内は、そう答えを見つけた。

 廊下の薄暗さはいかにも自分にとって好むものではない、が、もはや慣れつつある。
 何しろ、自分が人形なのだから。

 さて、何処へ行こうか、と思考を捻りながら何気に開いた先程の本に、地図らしきものが載っていることに気付く。
 完全に手書きではあるものの忠実な再現度である。

 どうやら見取り図よりこの屋敷は全部で5階建てにも及ぶようだ。
 学校のように幾つも並ぶ教室のような部屋。
 その内の一つであるA-4が自分の部屋。

 ただ、違和感があるのは5階の見取りであった。
 北側に位置する自分達の部屋と同じ形を示しているであろう、フリーハンドの間取りと、……その下には書き消そうと努力を繰り返した痕跡が残っている。ただし文字は読み取れた。
 
 SR-3

 そう書かれた一部屋。文字の上には消す為の努力が滲み出ている。
 異常な雰囲気を醸し出した地図。違和感を感じた。

 そうと思えば行ってみるのが良いだろう。

 と、階段へと本を頼りに進む。
 足音が淡々と部屋に響いていた。

 
 

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