06
「ランクは確か、ジェレード博士が決めているのよ。まあシャルネのことだから、きっと私より上」
ティアリアが立ち上がりながら言う。 ランクは兎も角、疑問符の外れないままにして、漸くこの環境というものが分かった気がした。 纏めれば、人形世界だ。
人間も存在するも、この屋敷内は不気味なことに"生きた人形"が沢山存在するようだ。 そう言った今も窓の外から視界に動く人形が映る。不思議なことに、恐怖を覚えることはなかった。 昔の世界の記憶が曖昧ながら存在する自分視点から言うと生きた人形などあり得ない。
……不思議な世界に来てしまったようだ。
そう、脳内に響かせるのは何度目であろうことか。
元々自分は人間ではなかっただろうか………。
思えば生まれて生まれる不可解な謎。但し、恐らく元々の自分の記憶を完全に甦らせることなどは不可に限りなく近いであろう。 もはや、誰も分からないのだから。
自分のたどり着く先は底知れず。 こうもなれば進むは人形の人生以外に何もない。 そう、この世界で生きる、そう、人形として生きることしか方法は存在しないのだ。 ならば、生きてやろうではないかと。 もし神が存在し、こういう運命だとか、そう言うのであれば。自分はその運命の中で心行くままに暴れてやろうと。 シャルネという名前の人形として生きてやろうと。 静かに決意をする。
そうとなればまずは人間観察ならぬ人形観察だ。
そう思い、ティアリアを見上げる。窓の外側に映った庭を見ているようだ。 瞳を細め見つめるその表情は喜怒哀楽どこにでも当てはまってしまうかのようで。 やはり人形の表情を読み取るのは難しいのかもしれないと思った。
……彼女は何を考えているのだろうか。 などと身近な所から見ていこうとティアリアの観察をしていると直ぐに彼女は視線を感じたかのように、此方へ首を傾けた。
「シャルネ?」 「ちょっとした人形観察をしてるんだよ」 「……そうなの?…見てもそんな見栄えになるものなんてないわ」
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