04
「届くかな…」
近くの机へと辺りの物を見事に使ってティアリアはテーブルにのし掛かった。 人形とは不便であると洗脳されつつある思考が揺らぎ、消える。 夢うつつの香り。意識こそはっきりしたものの、状況判断はかなりの難易度があった。
漆黒のカーテンは部屋を更に暗くし、暫くの時間の流れと共にこの部屋は実に埃だらけのようにも思えてくる。思考の揺るぐままに物音が絶えない机の方向へと顔を向けて声を発する。
「…窓開けていい?」
「……シャルネが出来るならいいよ」
と、ソプラノの声が上から返る。 今頃の机の上では何が繰り広げられているのやら。
向き直り、カーテンの裾を横へ持っていく。 ガラガラとカーテンの隙間から今までカーテンが光の遮りを破棄したかのように日光が当たった。 のと同時にして、見事な庭園が目前に映し出される。 綺麗。の一言に限る、手入れの行き届いた庭園は西洋の風潮に包まれていた。
まずそこで一つ、ここは完全脳の端で佇んでいた記憶が示す場所ではないと。 次に気付くのは恐ろしく硬い窓。 これは開けるのに相当時間が掛かるであろうと、しかしの埃が溜まりに溜まった部屋に居座ることにも嫌気がさすためにシャルネは窓を力の限りスライドさせる。
ふと、唐突に勢いよく動いた窓ガラスに身体が着いていかずバランスを崩す。
新鮮な空気がこの部屋の伝統的埃空気を押し流し始める。 のと同様に、花の匂いが自分の人形の鼻を擽った。 人形のくせして臭覚も優れているのかと益々疑問が過ったのと一緒にティアリアからの声が耳に入りこんだ。
「シャルネ、力あるのね」
「…窓を開けたくらいでまた大袈裟な」
「人形にして窓を開けるなんて十分だと思うわ」
そう机からヒョコリと此方に顔を覗かせたティアリアの仕草に自然と頬が緩む。 人形ということもあり彼女の容貌は十分美少女に認定されるほどであったのは言うまでもないだろう。
「これ」
どうぞと言わんばかりに手を伸ばした先に持たれているは古びた人形サイズの本。 ティアリアより投げられ首尾よく片手で受け取った赤色の本の一枚目を捲る。
暫くしてティアリアも近くへとロココ椅子を利用して降りてきた。 窓から射し込んだ光が見事に彼女の髪を反射し、より彼女の気品高き容姿に一瞬ばかり目が留まる。などは口にしないでしまっておこう。
「…これは…説明書見たいなもの?」
「多分ね、シャルネの言った通りで合ってると思う」
なんだその曖昧さは、とシャルネが苦笑いを浮かべるのと共に、彼女の次の言葉を待った。
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