強制的に決定された先に待つは黒い時
「…一時の……休戦…?」
空気が完全に固まる…のと平行に一部の者はうわぁと瞳を細め、またある者は顔を曲げる。
「…更に、お前達には協力して妖魔ラユナの退治に努めてもらう」
誰もが息を呑むも、誰一人反抗という思考など持っていないのである。というのは偉いさんの権力というものであろう。
それでも尚、その提案には流石に無理があった様子。
「……ちょっと待って下さい!!いくらなんでも協力をこの得体の知れない奴らとなんて無理あります!」
フェアリーの少女が勇気余って口を開く。
彼女は容姿といい実年齢性格からして幼いと言うことが可能な為に可能ならではの特権として反抗を軽く口にできたのであろうこと。
「まあまあ、言っただろう。これは危機的状況なのだと」
偉いさんの対応にも贔屓混じりが目立つ。流石は幼い容貌の少女に一喝くらわせる勇気が無いのだろう。
「でもっ…」
「うるせーなクソガキ。テメェみたいのがいるからこっちも気分が悪くなるんだ。ったく民族代表にこんなガキまで来るのか」
フェアリー少女の隣席に堂々と座る少年が睨む。
その表情に暖色など無縁、冷めきった表情のみがそのフェアリー少女の目に映していた。
「けれどいい案なんて見つからない」
と、水色の髪の少女。
「確かに、それは共通ね。どうもがいても妖魔ラユナには数的に無理がある」
と、赤髪の悪魔少女。
次々と開き直った声に終止符を打つようにして、ある者は口を開いた。
「……良いんじゃね?結局このまま散ってくのはダッサイし、どうせなら妖魔ラユナの為にもがく方が良いだろ」
「そうね」
「共通って言っても、まあ永遠ではないし」
そう、誰もが反論する口出しが消え、長かった山道もそろそろ終盤となったであろうとココにいる者全てが思った頃に、本日第二の修羅場はやってくる。
「それで、話とやらはまだ終わっていない。もうひとつ命令がある。妖魔ラユナへの対策とし、お前達は全員"ユーレシラ学園"に入学して貰う」
「理由だが、生憎のお前達以外に妖魔ラユナへの力を誇れる者は無と並ぶ。そこで、此方側は救助活動くらいしか出来ないのだ。そこで一つ、情報網という訳だ」
ユーレシラ学園とは、世界東部に位置する偉いさん共々が直接運営しているエリート学園だ。
「……あそこ、難関試験で有名ですよね。その点はどういったお考えで」
今まで一言も声を発していなかった少女が"無"を象徴とした無彩色なる深紅の瞳を偉いさんに向ける。
「その点は特別許可でカットする」
「………そうですか。………世界の為なら仕方ありませんよね」
そう情ナシの笑顔を目を細めて対応した後に、僅かに顔をしかめたのを、
隣に座るアイリア族の少女は見逃さなかった。
但し、そこからも道は長かった。
- 4 -
[*前] |栞| [ ]
[戻]