小説 | ナノ


それにしてもどこもかしこも不穏な空気が漂っているなぁ。教室に入っても小さい親衛隊員がぷんすか怒った様子で話し合っているのが目に入る。聡くんが会長さんを殴ったくらいでこんなに落ち着かなくなるものなのか。会長さんってやっぱりお偉いさんなんだね。重鎮ってやつ?

「聡ちゃん!もし親衛隊のチワワちゃんに睨まれたらとびっきりスマイルをくれてあげな!きっとイチコロだよっ!」

よし、聡くんがどれだけディスられているのか耳を澄まして聞いてみよう!何やら煩い伊織くんと終始無視な聡くんと自分達の席に着いて、少し離れたところでミーティングをしている隊員の話を一生懸命盗み聞きすると、

「さっきも生徒会の皆様と一緒にいたんだって!」
「えっ!?最低っ!昨日入って来たばっかりなのにそんな無礼なことをっ!」
「オタクのくせに気に入らないっ!」
「だよねっ!何あのもじゃもじゃ髪にビン底!あんな汚らわしい容姿でよく皆様の近くにいられるな!」
「そうだそうだ!」

……。これはもしや王道くんの話ではないかな。もじゃもじゃ髪にビン底って…。ぐるぐる眼鏡を汚らわしいなんてそっちこそ無礼なんじゃないか。センスを疑うよ。

「それかー、聡ちゃんが親衛隊を潰しちゃうとかっ。チワワちゃんばっかで心は痛むけどその時は協力するよ?一夜限りのコンビ復活!ってね。」
「お前最悪だな。」
「まぁ、王道親衛隊を潰すのは腐男子として最悪だろうけど、危害が加わる前に除去しなきゃねっ!それに聡ちゃんの可愛い可愛いせいちぃに何かあったら聡ちゃんが怖いもん。あー、溺愛攻めは怖いわー、ちょっとヤンデレっぽいのがまた怖いわー。超萌えるわー!」

伊織くんが本格的に煩くなって来たので隊員の話が聞こえづらくなってしまった。まぁ、良い。伊織くんだから許してあげよう。仕方ないからね。


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