小説 | ナノ


王道くん達が出て行った後、僕と聡くんと伊織くんは風紀委員長にソファーに座るよう促された。聡くんは風紀委員長を威嚇して僕を後ろに隠すように座った。

僕と聡くんが座った反対側のソファーに伊織くんが腰掛けて全員座ったのを確認すると風紀委員長は話しだした。

「昨日の食堂の件だがいつもの理由で良いんだな?」
「そうですよ!聡ちゃんのあふれ出る愛ですよっ!」

怖い風紀委員長に怯まずに答える伊織くんはとても勇敢だ。伊織くんは怖いもの知らずな節があるけど、もしかして数々の修羅場を乗り越えた末に身につけた強い心なのかな。かっこいい…。

風紀委員長からいつものように軽く説教をされた聡くんはいつものようにぶっきらぼうに頷いてみせる。昨日、これからは風紀委員長にお世話にならないよう気をつけると言っていたからもうお説教もこれっきりだね。

「あと、今回手を出したのは仮にもあの生徒会長だ。小野塚に喧嘩を売るような奴はいないとは思うが、多少親衛隊が騒ぐかもしれない。念のため注意は必要だ。」
「はっ!確かにっ!親衛隊のチワワちゃん達がぷるぷる震えて怖がりながら聡ちゃんに警告する姿が思い浮かぶっ!」
「いや、すでに制裁を企てている奴もいるだろう。」

制裁。親衛隊による愛の鉄槌だ。伊織くんによると大好きな人に近づいたり危害を加えた人にお仕置きするんだって。親衛隊もダークな一面を持ってるんだね。

そんな制裁が聡くんに…。とても、心配。

「おい、その時は正当防衛になるんだよな?」
「一応な。やり過ぎだけは止めろよ。」
「どうだろうな?」

聡くんがにやりと笑って言った。聡くんが笑うなんて珍しい。四日ぶりに見た。いつも無表情の聡くんだけど笑うとイケメンさが滲み出るよね。例えそれが黒い笑顔でも。


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