小説 | ナノ


聡くんはこの子のことが嫌いなのかもしれない。じゃあ、嫌いな子と話してる僕も嫌いになっちゃうかも。それは嫌だから僕はとっさに眼鏡をテーブルに置いた。聡くんに嫌われたら友達が伊織くんだけになっちゃう。

「成一、伊織、帰るぞ。」

聡くんは殴り合ったせいで口の端から血が出てる。すごく痛そうだけど、大丈夫かな。不機嫌そうな顔して僕の手首を掴んだ。怒っているのかもしれない。

「うん、ごめんね聡くん。嫌いにならないでね。」
「なるわけねぇだろ。」
「ありがとう。」
「可愛い奴らめ…!」

どうやら聡くんは僕のことを嫌いにならなかったようだよ。嬉しい。万事解決だね。

教室に帰る途中に伊織くんに聞いたんだけど、さっきのぐるぐる眼鏡の子が今日来た転校生で、オムライスの王道くんらしい。そして何と、あのもじゃもじゃ髪もぐるぐる眼鏡も変装なんだって。素顔はとても可愛いらしいよ。伊織くんは何でも知ってて凄いな。

変装って何かかっこいいな。僕もあのぐるぐる眼鏡を使って変装してみたい。なのに結局製造会社はわからなかったよ。惜しいことをしたな。


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