小説 | ナノ


「赤利たん、こっち見てっ!」

ん?何か呼ばれたような気がした。こっちってどっちを見れば良いんだろう。辺りを見回していると、目を向けた所の周辺の人達が手を振ってきた。誰だろう。聡くんと伊織くん以外に知り合いなんていたかな、と思いながらふらっとそちらへ行こうとしたら伊織くんに腕を掴まれ阻止されてしまった。

「せいちぃ、見ちゃ駄目だよ。」

更に伊織くんはそう言いながら僕の目を手で覆った。するとガシャァンと何かが壊れる音がして絶叫がした。何かあったのかな。食堂ってやっぱり怖いところなのかもしれない。何回か壊れる音と絶叫がしてしばらくして静かになると伊織くんの手が離れて、苦笑をしている伊織くんの顔が見えた。

「何かあったの?」
「ゴミを片付けただけだ。」
「聡くんは偉いね。」

率先してゴミを片付けるなんて聡くんはボランティアの才があるのかもね。聡くんは何だか怖い顔して僕の手首を掴んで歩き始めた。それにしてもさっきの音は何だったんだろう。食堂が危険である理由なのかもしれない。音がした方を見ようとしたら、「せいちぃ、見ちゃ駄目だよ。」と伊織くんにまた同じことを言われた。見ちゃいけないことが起きたみたいだね。


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