小説 | ナノ


もう授業の時間が始まっていて先生が教壇で困った顔をしているのが見えた。僕は一番後ろの席で僕の右隣が聡くん、僕の前が伊織くんなんだけど、後ろの僕達2人に力説している伊織くんは先生に気づいてない。

「手を出さないのは当たり前だろぶっ殺すぞ。俺は成一を公衆の面前に出させたくないんだよ。」
「は!?何それ、愛がだだ漏れで美味しいよ!でもね!食堂は譲れないからねっ!」
「駄目だ。」

聡くんは先生に気づいてるはずなのに伊織くんと喋ってる。仲良いのは良いけどいけない子だなぁ。先生は諦めて授業を始めたから僕はちゃんと授業受けなきゃ。と、思ったんだけど…伊織くんのせいで黒板がよく見えない。身振り手振りが大きいしこれじゃあノートがとれないよ。

「伊織くん。」
「何っ!?せいちぃもそろそろ食堂行きたいよねっ?そうだよねっ!よぉし、一緒に食堂」
「邪魔だよ。」

僕がそう言ったら伊織くんはしばらく固まってしまった後に「す、すいまてん…。」と言ってちゃんと座って前を向いてくれた。素直でいい子だな、伊織くん。聡くんが鼻で笑ったけど何でだろ。何はともあれ、これで授業に集中出来るね。良かった。


prevnext