小説 | ナノ


穏やかで暖かい5月の朝、時折吹く風が爽やかで心地いい。春と夏の変わり目、辺り一面の木々は綺麗な緑で癒される。ほどよく雲が散らばった青空も清々しい。今日は良い天気だな。さっき起きたばかりだけどまた眠ってしまいそう。

「ねぇ、寝ていい?」
「うわぁぁぁ!!王道転校生だぁぁぁ!マジで黒もじゃとか萌え死ぬし!素顔のプリティーフェイス早く見てぇ!!おっと、ヘイヘイ!門をよじ登ってるけどそれを越えたら麗しの副会長様だよぉぉん!」

僕が座り込んで寄りかかっている木の上で何やら興奮している伊織くん。僕の声が届いていないのかな?もういいや、寝よ。

ふぁっとあくびをすると、木の上からとん、と人が飛び降りてきて、僕の隣に座って抱き寄せられた。

「1人で寝てると危ねぇよ。」

あんなに格好よく木の上から飛んで着地するなんて聡くんは身軽だな。聡くんと伊織くんは木を上れて羨ましい。僕は上れないんだ。木の上ってどんな景色なんだろ。伊織くん、何を見てるのかな。

「誰か来たらぶっ殺すから安心して寝てろよ。」

そう言って聡くんは僕の頭を優しく撫でた。聡くんの体温が加わって更にぽかぽかする。気持ち良い。


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