小説 | ナノ
すがる視線を感じて何とか気の利いた言葉が出ないかと探したが、やっぱり見つからなかった。俺も大概、コミュ力が低いのだろうか。女の子を褒める言葉ならどんどん出てくるのに。
「知ーらない。そもそも友達って何かよくわからないし。お前と一緒にいて楽しいから友達じゃねーの?」
事実、拓弥と下らない話をだらだらと喋ったりするのは割と楽しかったりした。俺がまともに関わる男といえば父、2人の兄、宮下、そんくらいだったから、同世代の男とあんな風に喋るのは初めてだった。悪くない、と思えた。これが友達っていうのか。
拓弥は昔は友達いたっぽいけど、俺は男の友達なんていたことないし。
「そうか。俺といて楽しいの?変わってるな。さすが最低女タラシだ。」
「嬉しそうにしてるくせに何言ってんだよ。」
「う、嬉しいとかじゃねぇしっ!」
友達って言われて泣いてたくせに。それは心の中に押し込んだ。拓弥も拓弥でいろんなこと思ってんだろうな。キレやすいアホだと思ってたがそういうわけでもなさそうだ。
顔を赤くして睨み付けてくる拓弥に俺は問う。
「お前は俺と友達でいーの?」
「ふん、しょうがないからぼっちの蓮と友達になってやるよ。」
すると拓弥は嘲笑うようににやりとして答えた。すっかりいつもの生意気な調子に戻った。ぼっちで友達不足なのはお前だろうが。
椚やもじゃ男のせいで恐ろしく不機嫌だった拓弥はすっかり機嫌を治し、珍しくにこにこと笑っている。キモい、と言ったら殴られた。それでも嬉しそうに笑う拓弥につられてふっと顔が緩んだ。すると拓弥は動きを止めてまじまじと俺を見た。
「蓮って笑うんだ。」
失礼な。
そんな感じで、今日、初めて男友達が出来た。
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