小説 | ナノ



「ホッントにムカつくよなぁ!何あの作り笑い!気持ち悪くてイライラするっつーのっ!」

あれから数時間経った昼休みの今でも拓弥の愚痴は止まらない。同じようなことを繰り返し言われて俺はもううんざりしている。

あの真ん中の腹黒野郎は俺の予想通り今の生徒会会長親衛隊隊長だった。名前は椚棗。昔から拓弥を目の敵にしていて会う度にあのような嫌味を言われるらしい。

「俺から隊長の座奪ったとか自慢気になってるけど言っとくけど俺、自分が隊長だったの言われるまで忘れてたからっ!超どうでも良かったからっ!」

むきになって話す拓弥にそれは無理があるだろうと思った。拓弥が荒れている姿を見てクラスメートは息を殺してなるべく音をたてないように行動している。

因みに今日は昼食は自分達の教室で食べている。試験前日で空き教室は全て自習室、補習室となり好き勝手使えないからだ。大半は既に食堂に行ったが、ちらほらと残っていた生徒達も拓弥の様子を見てそそくさと教室を出て行った。そしてついに教室には俺と拓弥だけとなり今まで2人で空き教室で食べていた時と同じような状態となった。

「あの両サイドのチワワ野郎もあんなんで泣きそうになるとかメンタル弱すぎじゃね?俺にはバンバン言うくせに自分が言われると泣くとかマジウザいわ。」

怒りをこめて乱暴にパンを引き契るように食べる拓弥。いくらなんでも引きずり過ぎじゃないか。俺も結構苛ついていたのが拓弥のおかげでふっ飛んだ。

「だいたいさぁ!」

拓弥がまた愚痴を言い始めたその時、教室の外から聞き覚えのある大音量が届いた。複数の足音がこの教室に近づいて来る。

「れーーん!!いるかぁー!?」

俺はため息を吐き、拓弥の目は更に鋭く吊り上がった。

今日はもしかして厄日なのか。


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