小説 | ナノ


昔からホモネタに絡ませられると頭に来て必要以上のことを言ってしまう。俺も割と短気なのだろうか。

今にも泣き出しそうなサイド2人のうち1人が親の仇を見るような目でこちらを睨みながら無表情の現隊長にもじゃ男並みの声量で喚くように言う。

「こ、こんな奴ら制裁しちゃいましょうよっ!棗隊長っ!僕達のことを侮辱したんですよっ!?」
「てめぇらが先に俺達のこと侮辱したんじゃんかよ。言い返すに決まってんだろーが。」

すかさず拓弥が反撃するが「うるさいっ!」と声を震わせて返された。ヒステリックな奴だな。

そんな隊員を現隊長は肩に優しく手を置いて宥めるような素振りを見せる。そしてにっこりとまた綺麗な笑顔を作ってこちらに向き直った。

「休み時間終わりそうだからもう行くね。結構立ち話しちゃった。」

先程の険悪なやり取りなどまるでなかったかのように微笑む現隊長に副会長を超える腹黒さを感じてゾッとした。納得がいかないというようなサイドの2人を引きつれて俺達の横を通る。そのまま通りすぎるかと思ったら俺の真横で止まって抑えがちの声で現隊長が耳打ちした。

「拓弥くんと何があったか知らないけど痛い目みたくなかったら今まで通り1人で大人しくしといてね。」

それだけ言い残して颯爽と3人は去って行った。親衛隊が親衛対象に近づいてなくとも私用で制裁するという噂は本当だったらしいな。さっきの隊員の言葉を聞いてしみじみと思う。まぁ、制裁された時はそれを理由にして学校行きたくありません街に出ますとか言えるし別に良いよな。それなら理事長も納得するだろう。


prevnext