小説 | ナノ


確かに2人で歩いているといつも周りの生徒はこちらを見てひそひそと話していたりはしたが、まさかそんな妙な噂をたてられていたとは。心外極まりない。何で俺が男なんかに落ちなきゃいけないんだよ。しかもこんなキツい性格の奴に惚れるわけないだろう。

「びっくりしたよ。あんなに僕らのこと嫌ってた桐矢くんがすんなり拓弥くんを受け入れるなんて。…そんなに身体が良かったのかな?拓弥くんってばやらしいね。」
「ハハッ、淫乱はヤれたら誰でも良いんでしょ?」
「桐矢くらいしか相手にしてくれないからねぇ。皆あんたのこと嫌いだもん。」

現隊長が軽蔑した目でうっすらと笑う。それに続いてサイドの2人もさっきまで拓弥に怖気づいていたのにまた見下すように喋り始めた。

つーか、それどういう意味。

横目でも拓弥が今までにないくらい顔を歪ませるのがわかった。

「は?死ねよ。キモいんだよ不細工。頭ん中エロいことしか考えてねぇの?これだから馬鹿は困るんだよ。」
「俺さ、お前らみたいな気持ち悪いホモじゃないからヤる以前の話なんだけど。」
「なっ…!?あんた達、僕達にそんなこと言って良いとでもっ!」

「お前らブスの方が誰も相手にしないだろ鏡見とけよ厚化粧。アイシャドーずれてんぞ。」
「男で化粧とかマジ引くんだけどー。女の子の劣化版とかあり得ないから。」

売り言葉に買い言葉。3人が口々に罵るのを俺達も負けじと罵倒で返す。あぁ、何してるんだよと言葉を出してから気付いた。通りすがる生徒はびくびくと怯えて、現隊長の顔からは笑顔が消え、サイド2人は涙目でぷるぷると震えて睨んでいる。

やっちゃったなぁ…。拓弥は言ってやったぜ、とでも言うかのようにドヤ顔でいるが、正直言いすぎたかもしれない。


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