小説 | ナノ


授業終了のチャイムが鳴ったので俺達はやっと惨めな思いから脱することが出来た。教室に戻ろうと拓弥が理科特別室4のドアを開けて外に出て、俺も後に続いた。

「あいつらマジ絞めたいわ。明日試験なのに。10位から外れたらあいつら1人ずつ殴ってやる。」

不穏な空気を放つ拓弥に冷や汗が垂れた。本当にこいつは怖いなぁ、と思いつつ拓弥は相当頭が良いから10位から外れることはないだろうと思う。授業めっちゃ聞いてるし。

次の授業は古文だから教室移動はないはず。なので拓弥の愚痴を聞き流しながらAクラスの教室へと向かう。




「…うわ。」

教室へ戻っている途中、前方から来た3人組の生徒達を見て拓弥が小さく声を漏らした。見れば3人とも小柄で拓弥と同じ部類の女っぽい顔立ちをしていた。

その中で真ん中にいる、ベージュ色の髪がふわふわとして、目尻が垂れた大きい目に優しい印象を受ける綺麗な顔の生徒が俺達を見てにっこりと笑って近寄ってきた。拓弥が嫌そうに舌打ちするのが聞こえた。

「あれ、拓弥くん。授業サボってこんなところで桐矢くんと何やってたの?さすが拓弥くんは余裕だね。試験前日にイイコト出来るなんて。」
「は?キモい妄想してんじゃねぇよ。」

近寄ってきた生徒が笑顔を絶やさず話しかけてくるのを拓弥は口汚く切り捨てた。どうやら拓弥と知り合いらしい。仲は悪いようだが。

「ちょっと!棗隊長にそんな口きいていいとでも思ってるの!?失礼だよ!」
「そうだよ!負け犬のくせに喚かないで!」
「あ"ぁ"?」
「「ひっ…。」」

話しかけてきた奴の両隣にいた2人が拓弥に向かって反論するも、お得意のガン飛ばしで2人とも青ざめてしまう。しかし真ん中の奴は一向に微笑んだままだ。柔らかい印象のこいつと刺々しい拓弥、全くの正反対だ。


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