小説 | ナノ


SIDE:繋都

リビングに戻ってダイニングテーブルにさっきもらった手提げを置き、それを目の前にして自分も座った。テーブルに肘をついてそれをじっと見つめる。

桐矢を助けたのはほんの気まぐれ。真灯留と一緒じゃなくて暇だった。昔みたいに1人だな、と思っていた(断じて寂しいとかじゃない)らよろよろと動く段ボールを見つけただけ。

礼を言われるなんて至極久しぶりだ。それにあの桐矢が礼を言うような人間だとは思っていなかった。桐矢蓮はこの学園の異端と言われているが意外と普通な奴なのかもしれない。やっぱ真灯留といい桐矢といい外部生は面白い。


元会長親衛隊の隊長の新崎が一緒にいたのはよくわからないが。

一匹狼という肩書きは地味にコンプレックスだ。Eクラスというだけで一般生に敬遠され、頭が狂った奴ばかりのEクラスでも浮き、親衛隊のせいで更に孤立が進む。それを知らない真灯留が友達になってくれたのは嬉しかった。人と繋がりを持てることがこんなに嬉しいとは…。

そして今日、また新たに人と接点が出来た。これが目的だったというような深い考えは無かったが結果オーライ。それに、良いものが見れた。

『…繋都?』

先程桐矢が上目遣い気味に言った台詞を書き替えて脳内で再生されると、俺は自分の頭を殴りたくなった。…あの女好きクソイケメンが。あんなに綺麗な顔してるから俺がこんなんになるんだどうしてくれんだよ。

…何考えてんだ俺。

はぁ、とため息を着いて妙に緊張するがもらったものを取り出す。

「…何だ…?」

高級そうにラッピングされた箱。底面のシールを見れば[洋菓子]。クッキーだろうか。甘いものは、割と好きだ。中身を確認した後、俺は丁寧にしまい、自分の部屋の机にそっと置いた。リビングの共有スペースに置いておいたら真灯留に食われそうだしな。まぁ、俺はもったいなくて食べられないかもしれないが。



SIDE END


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