小説 | ナノ
緊張しすぎて息がつまりそう。俺って実は人見知りなのか。いや、知らない人に声をかけるナンパは特技だろうに。
「あ、あのっ、さ…これ。」
俺は言いながら片手に持ったクッキーの手提げを俯きながら羽根に押しつける。声が若干裏返ったような気もするし、それも恥ずかしくて羽根を見れない。
「今朝のお礼、だから…その…よろしく…。」
反応がない羽根にジリジリと不安が芽生えてきて冷や汗もかいてきた。顔に熱が集中するのがわかる。
「あ、ありがと…ぅ。」
照れ臭くて言いたいけど言えなかった言葉を捻りだした声で言う。…言った…!ついに言ってやったぞ…!これで任務は成功。肩の力が抜けた。心拍数も段々と正常に戻ってきて顔の熱もうっすら冷めた気がする。
「…羽根?」
それでも上から声が聞こえないので不思議に思い、やっと羽根と目を合わせる。羽根は面くらった顔をしていたが、すぐに顔が真っ赤になって目を逸らされた。何だ、お前も照れてんのか。
羽根は長い間突き出されていた手提げを受け取り、やっぱり照れ臭そうに頭をかいた。
「お、おう…どういたしまして?」
何で疑問系なんだと思ったが、険しい不良顔からそんな礼儀正しい言葉が出るとは思わなくて心の中で少し笑った。
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