小説 | ナノ


一匹狼のくせに無言が気まずいとか言っていたが、ギャップってやつなのか。

羽根との会話を思い出しているとどうも一匹狼という肩書きがしっくり来ない、と思っていたら、

「あ。」

重要なことを思い出した。新崎も怪訝な様子でこちらを伺う。

「もじゃ男に会わずに渡せるかもしれない。」








時変わって夕食時、俺と新崎は寮の廊下の影に隠れて羽根ともじゃ男の寮部屋を見張っていた。スーパーで買ったクッキーを持って。寮に隣接する建物の中にはスーパーや薬局など色んな店があってある程度の買い物はこの建物で済ませられる。適当にブランド物っぽいクッキーを買って羽根に渡そうと試みようというわけ。

きっと今あの部屋にはもじゃ男と羽根、三寺、生徒会役員でわいわい騒いでいるのだろうと思う。あのメンバーでどんな遊びをするのかは全く想像出来ない。いつももじゃ男を取り合って取り巻き達が仲間割れする会話ばかり聞いているからはたから見て楽しそうとは思えないんだけどな。

そして俺と新崎は不気味なくらい目立ってしまって通りすがる生徒達に必ず凝視されるのだが、新崎が思いっきり睨むとその生徒は顔を青ざめて逃げ去る。新崎恐るべし。



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