小説 | ナノ



「ていうかさー、羽根ってもじゃ男の同室者だから羽根に会いに部屋行くともじゃ男にも会うけど良いのか?」

新崎の言葉に俺は言葉を失い固まった。新崎は知らなかったのかとでも言うかのように呆れた様子でじとりと俺を見る。

知らなかった。他人の寮事情なんて知るわけないんだけど。なるほど、羽根ともじゃ男の接点が見えた。出会いは寮の部屋で、てか。

本当に面倒なことになった。もじゃ男だけじゃない、どうせもじゃ男の周りにはいつも生徒会や三寺がいるのだからもじゃ男に絡まれると二次災害が心配だ。いつもちくちく嫌味を言われてさすがに俺もイライラするんだよな。

「…羽根ってEクラスなんだよな…。」
「え!?お前行くの?不良の巣窟に?止めとけよ貧弱なんだから。」
「お前に言われたくない。」

貧弱を具現化したみたいな新崎に貧弱と言われるなんて心外すぎる。羽根にも貧弱と言われたけど、俺ってそんなに弱くない、と思いたい。しかし一般生徒がEクラスに行くのはやっぱり無謀かもしれない。リンチされるに決まっている。一瞬だけ頭を過った恐ろしい案を消し去る。

「それに羽根ってEで孤立してて一匹狼って言われてんだからEの教室に行っても居ないんじゃないか?」
「え、孤立?」

どうやらここにもぼっちさんが居たみたいだな。羽根の場合はもじゃ男がいるから新崎みたいな正真正銘のぼっちというわけではないのだろうけど。


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