小説 | ナノ


羽根が気にした様子は無かったが、借しを作ったまま何もしないのもよくない気がするのだ。

「なぁ。」

ということで、ちょうど真正面にいた新崎に意見を聞くことにした。俺が話しかけると、新崎はやけに嬉しそうに素早く顔を上げた。こいつといい、羽根といいそんなにお喋りが好きなのか。そんなに沈黙が嫌なのだろうか。

「羽根に礼を言いそびれたんだけど、そういう時普通どうしてんの?」

俺が質問すると新崎は目を泳がせた後、顎の下に手を添えて「うーん…。」と考えこんでしまった。

その時俺は質問する相手が悪かったと気付いた。新崎は俺と同じく人と接することが少ないのですぐに答えが返ってくるはずがない。難しい質問をしてしまったな。

まぁ、一緒に考えるのも悪くないか。こいつもAクラスだからアホではないだろうし。ぼっちなりにも何か良い案が出てくるだろう。

「何かちょっとした手土産持ってって頭下げりゃあ良いんじゃね?」

手土産、か。確かにありがとうだけをわざわざ言いに行くのも変だし、良いカモフラージュになるかもしれない。あの時何も言わなかったのはタイミングがわからなかったわけじゃなくて、後でしっかり手土産を持ってお礼を言いたかったからだし、みたいな感じを醸し出せるな。


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