小説 | ナノ



「いぃったいっ!!」

顔面ばかり気にしていてノーマークだった足を思いっきり踏まれて悶絶。手加減なかったぞ今のは…。教室の隅の方から「ひぃっ…。」と小さく悲鳴が聞こえた。

「……1人にすんなっつの…。」

足を手で押さえて痛みに悶えてると、上から新崎が呟く声が聞こえた。

「は?」

新崎の言葉に思わず聞き返してしまった。新崎を見上げると、ついさっきの恨むような顔とは変わって、寂しそうな子供みたいに拗ねているような顔をしていた。

1人にすんなって…、えー…?まさかそんなことで怒っているとは思っていなかった。確かに、音無に2人でいろって言われた翌日の朝から新崎を置いていくのは悪かったかもしれない。

しかし、新崎だって1人でいるのが怖いとか乙女チックな奴じゃないはずだ、昨日の言動を見る限りでは。いやむしろそんな乙女チックなこと考えてたら女の子への侮辱としてぶん殴りたくなるんだが。お前、もしや見た目通りに女々しいのか新崎。

しばらくその状態のまま固まっていると授業開始の鐘が鳴って、新崎は拗ねた顔のまま席へ帰っていく。クラスメート全員が新崎の一挙一動に釘付けになっていた。

「じゅ、授業…始めます…。」

気の弱そうな教師が教室に入って来たので、ぎこちない雰囲気で全員席に着いていった。


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