小説 | ナノ


教室の近くまで来てある重要なことに気付いた。スクールカバンが無い。そういえば寮のリビングのソファーに置いたままだ。というか、カバンを持つ暇もなく宮下に強制連行されたんだよ。

「はぁ…。」

寮に戻らなきゃいけないのか、面倒。まぁ、どうせHRには既に遅れてるし、宮下に会いたくないし、それでもいいかと思った。ため息をついた後、俺は重い足取りで寮に向かった。




HRには完全に間に合わなかったが、1時間目が始まる前には教室に戻ることが出来た。今日は朝から身体を動かしすぎた。明日は筋肉痛だー、とまたため息をつきそうになった時、

「うわっ!」

横からシャツの襟元を掴まれ、手が伸びてきた方に無理矢理向かされる。そこには、眉間にしわを寄せて、吊り上がった目にへの字に曲がった口、見るからに不機嫌そうな顔の新崎が至近距離でいた。

「何…?」

横目でもクラス中から注目されてるのがわかる中、俺は恐る恐る声を出す。

すると、新崎の目付きが更に鋭くなる。あれ、デジャブ。今朝の宮下も俺が何か、と聞くと表情が強張った。また怒られるのか。でも今度もやはり心当たりはない。

「お前さ、馬鹿だよな、ホントに。マジで死ね。」

怒りを表わにした様子で暴言を吐かれた。何かこの雰囲気一発殴られてもおかしくないよな。宮下に殴られる前にこいつに殴られそうだ。



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