小説 | ナノ


何でも聞けよ、とばかりに得意気な顔をしているが別に羽根自身について聞きたいわけじゃない。そもそもそんな仲良くないだろ。

「何で俺のこと助けたの。」
「暇だったからな。」

即答。暇だったって、お前にはもじゃ男の世話という大切な仕事があるだろうに。サボりかよ。

「食堂はうるさくてうぜぇんだよ。真灯留に誘われてしょうがなく行ってたけどな、限界ってもんがある。」

俺の意図を読み取ったのか、羽根は顔をしかめて言った。俺も昔、編入したての頃に食堂に行ったことがあったのだが、叫び声でうるさく、落ち着いて食事が出来なかったのを覚えている。それ以来食堂は行かずに購買派である。

ていうか真灯留ってもじゃ男の名前か。妙に女の子っぽい…イラ。

「よく俺なんかに話し掛けてきたな。」

俺に自分から話し掛けてくる奴なんかそういないのに。

「別に。嫌いじゃねぇし。」
「…へー。」

意外だ。不良って大概俺と相性悪いのに。俺は女の子にモテてよく目立ったから不良には気に入られなかったようでね。昔はよくケンカ吹っかけられたものだ。全力で逃げたけど。

「…。」
「…。」

会話が途切れてしまった。羽根はまた難しい顔に戻ってしまったけど、まぁいいか。


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