小説 | ナノ



「く、はぁ、…っふ、と。」

ふらふらと歩いていると周りからは視線が集まる。ふとよろめいても「あっ…。」とか声をあげるだけで助けようとはしてくれない。どいつもこいつも遠巻きに見ている。別にいいけど。

それより力を使いすぎて頭が痛くなってきた。めまいがするし、くらくらする。

「……おい。」
「…、ん?」

突然正面から声がかかった。しかし段ボール2箱のせいで前があまり見えない。俺に話しかけてくるなんて誰だろう。今まで聞いたことのない低い声だった。

「何してんだよ。」
「べ、つに…。退いてよ。」

タメ口で話しているということは知り合いなのだろうか。しかし、こっちは持っているだけで疲れるのだから立話したくはない。誰だか知らないが早く退いて欲しい。

「チッ…。」

舌打ちされた。短気だな。とりあえずそいつを無視して歩きだそうとすると、

「ん、え?」

ふっと軽くなったと思えば上の段ボールが1つなくなって目の前の人間の顔が見えた。

「何やってんの。」
「は?助けてやろうっつーんだよ、何だその態度は。」
「…何で?」

目の前の人間もとい赤髪の不良、羽根繋都はいつもの睨んだような目付きで俺を見てきた。


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