小説 | ナノ


宮下の新しい一面も垣間見えたところで、仕方なく俺は段ボールを持ち上げる。

「ぐっ、重っ。」

段ボールを2つ重ねようと1箱持ち上げただけで腕が痛くなるくらい重かった。これ2箱同時なんて俺潰れちゃうんじゃないの。しかし1箱ずつ持って行く時間などない。

ゴミ捨て場は物凄く遠い場所にあるのだ。汚いものが大嫌いなお坊ちゃん方を考慮して。ここから1往復するだけで軽く30分はかかる。無駄に広い学園で困ったものですね全く。

ため息をつきながら作業を再開し、段ボールを2箱重ねて、死ぬ気で持ち上げた。

「ぐぅぅっ、ん゙、…」

思わず呻き声が洩れる。重い。重すぎる。死ぬ気で持ち上げたけど本当に死ぬんじゃないのか。両腕とれてミロのヴィーナスみたいになっちゃうんじゃないのか。腕がなくなったら女の子を愛でることが出来ないじゃないか。俺の人生に光がなくなるぞ。

そんなことを考えながらも必死に一歩踏み出した。それだけで息切れしてきたぞ。この調子じゃHRに間に合いそうもない。カバンは寮に置いたままだし。当分宮下には会うのが怖くなるな。


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