小説 | ナノ


玄関のドアを開けるとそこには予想外の人間が立っていた。

「きーりーやー?」

宮下は黒い笑顔を浮かべて玄関の縁を掴みながら上から見下ろされる。

「え、何か用…?」

宮下の様子から見て嫌な予感がする。俺、何かしたっけ。俺が戸惑いながら言うと宮下は笑みを引きつらせ頬をピクピクさせた。

「昨日俺はお前に特別室にある資料を俺の机に置いておけって言ったよなぁ?」
「あー…。」

昨日新崎の強姦未遂事件に巻き込まれたせいで忘れていた。いや、しかしあれは仕方ない。人助けだから。

「で、言い訳は?」
「面倒くさいからいいや。ごめんごめん。」

俺に非はないのだが、説明すると長くなるので、軽く謝った。すると宮下の目がギラリと光り、

「うぉわっ!」

宮下は俺の首を片腕で締め上げて引っ張りながら歩き始めた。

「ぐぐっ、苦しいっ!死ぬ、死ぬぅ!」

力の強い宮下は俺をがっちりホールディングしたまま離そうとしないでむしろ苦しめるかのように俺を引きずる。

「あぁっ!マジで、ごめ、なさいっ!うぅぐ、」

公衆の面前で苦しみ悶えてもなお終わらない締め上げ。……天に召される…。


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