小説 | ナノ


新崎の噂は俺と同じく悪い噂ばかりだ。

そこら辺のチビっこくて女の子っぽく振る舞う生徒がよく新崎の噂…というか陰口を言っていて自然と耳に入ってくる。淫乱だとか性悪で史上最悪の隊長だとか。性悪であることは先程の出来事で確認済みだが、飛び抜けて女顔の新崎への嫉妬が根も葉もない噂を作っているのだろう。

新崎は俺の言葉に嫌そうに顔を歪めた。

「噂って…。あれほとんど嘘だからな。別に俺は男とか好きじゃないし。」
「え、同類?」
「…ホモじゃないってだけで男嫌いなわけじゃないし女好きってわけでもない。」

俺と同類にされるのが相当嫌なのか、強い口調で言った。それより、

「ホモじゃないのか?」
「あったり前だろ!」

こんな女顔だし親衛隊の隊長なんかやっていたから絶対ホモだと思っていた。

「会長が好きなんじゃないのか?」

会長が好きだから親衛隊の隊長だったんじゃないのかよ。俺がそう尋ねると、新崎は唸ってから話づらそうに言う。

「友達に誘われて親衛隊に入って、流れで隊長になったんだよ。会長が好きとかじゃない。」
「適当な。というか友達いたのかよ。」
「うぜぇよ。…まぁ昔は少しいたんだけど隊長になったとたん皆離れていった…。」

悲しい過去を持っていた。


prevnext