小説 | ナノ


俺は遠くの方を見つめて声を弾ませるように言う。

「由井っ!」

その言葉に3人は俺達から少し距離を置き、俺が見ていた方へ視線を向ける。もちろん風紀委員長などいない。

その隙を狙って俺は新崎の手を掴んで、…掴むまでもなく新崎は俺より先に逃げていた。一緒に助けてやろうと思ったのに…!

後で不満は言うとして俺も新崎の後を追うように走った。そして俺の後ろを3人が追いかける。

小柄な新崎にはすぐに追い付いて俺は新崎と並んで逃げる。

「保健室っ!」

新崎は言うと、角を曲がってすぐにあった保健室に駆け込み、俺もそれに続いて入って、俺が入ったのを確認した新崎はすぐさまドアを閉めて、鍵をかけた。

壁にもたれかかって、足音が遠ざかっていくのを荒い呼吸をしながら聞き取った。保健室には生徒も先生もいないようで電気もついていないので暗く、上手い具合に隠れることが出来た。

しばらくして呼吸を整えてから新崎は俺に言う。

「すまない、助かった。さんきゅ。」
「…道連れにして…。」

怒りを込めた口調で言うと新崎は苦笑いをした。

「わ、悪かったな。俺1人じゃどうにも出来なかったし。」



prevnext