小説 | ナノ


席についても周りからしかめっ面で見られる。今日は生徒会の連中とは一緒じゃないが、突き刺さる視線は俺に向かってじゃないのに痛い。

何で真灯留にそんな怖い顔するの。俺の真灯留を見ないで。

「朝日?繋都?何でそんな怖い顔してるんだ?」
「「え?」」

真灯留が首を傾げて言った。羽根も俺と同じことを思っていたのだろう。

「何でも。可愛い真灯留が誰かに取られないと良いなって。」
「お、俺はか、可愛くないっ!!!」

真灯留は可愛くて良い子。赤面して可愛い真灯留が話を変えようと慌てて話し始めた。

「そ、そういえば今日変な奴に会ったんだ。」
「…変な奴?」

羽根が聞き返した。俺は嫌な予感がした。俺も先ほど『変な奴』に会ったからだ。

「俺が親衛隊に言いがかりつけられた時に電話ですごい喧嘩してる感じで通り過ぎたんだ。初めて見るけどすごい綺麗な奴だった!!」

嫌な予感は的中したかもしれない。"初めて見る綺麗な奴"。桐矢は見た目は綺麗だからな。電話で喧嘩していたことと桐矢が沈んでいたことが繋がらなくもない。

羽根は桐矢が帰って来たことを知らないのだろう。いまいちピンと来ていない様子。



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