小説 | ナノ


SIDE:隆明

放課後、風紀の仕事である校内の見回り中、ヤツを見つけてしまった。

1ヶ月前に来た転校生のせいで学園が荒れていて、憂さ晴らしや制裁という名目でのリンチや強姦が多発している。なので人目がつかない林という定番の制裁場所は毎日チェックしているのだが、

「待って!誤解なんだ!えっと、その……いや伶奈が一番だって…ちよっ、違っ。」

電話に向かって必死に説得しているように見える男、桐矢蓮。

超がつく女好きと一部には煙たがられている彼を見るのは実に3ヶ月ぶりだ。高2に上がってから彼は誰にも姿を見せていなかった。

桐矢がいないことはよくあるのだがこれほどの長期間いなくなるのは初めてであったが、生徒間でNGワードになりつつある桐矢を話題にする者はいなかった。

「いやいや、ホントだよ。だからそんな家なんて物騒な……あ。」
「っ。」

何やら痴話喧嘩をしている桐矢がこちらを見て、目がばっちり会ってしまった。

「いや何でもないよ、ホントホント。」

桐矢は俺から離れるべく体育館側へと電話をしながら歩き出した。

風紀として今の学園の状況を伝え、このような人目につかない場所には来ないよう言わなければならないのだが…。



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