小説 | ナノ


俺は「退学」という言葉に目を輝かせた。

何回も言うが俺はこの学園が嫌いだ。学園にいたくないから抜け出していた。退学させてくれるならありがたいことこの上ない。

しかし理事長は俺の意図を理解したようで困った顔になる。

「君にはご褒美みたいだね。うーん、じゃあ留年かな?」
「えっ?」
「このままの状態を続けてるとずっと留年。退学も卒業も出来ない。この学園に縛られ続けるんだ。…困るだろう?」

理事長のニヤリとした笑みに俺は一生懸命首を縦に振った。

こんな学園、早く卒業して自由になりたい。そして何の足枷もなく女の子の元へ…。俺の反応を見た理事長は優しく微笑んで言った。

「じゃあ今日から寮に住んでちゃんと学園内で生活すること。長期休み以外は敷地内から出ちゃダメだよ。」
「はいっ。必ずやっ。」

長期休みは街へ行ける。ずっと閉じこもっているわけじゃないんだ。結構甘い。優しいじゃん。

俺が威勢よく返事すれば理事長は何故か懐かしむような目をする。

「君がこの学園に来た理由を考えたらもっと早く対処すべきだったかもね。君のお父様に申し訳ない。何しろこの学園は色々と問題が多い。今年に入ってもっと忙しくなった。」

柔らかく咎められている…。



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